タドキストによる英語多読ブログ

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多読によって語彙力はどのように向上する? Waring & Nation (2004)のレビュー論文のご紹介♪

こんにちは♪

 

以前、英語を読んで何度くらいその語に遭遇すれば習得できるかについて、過去の研究をまとめたUchihara, Webb, & Yanagisawa (2019)の論文をご紹介させていただきました。

erelc.hatenablog.com

 

語彙を単語帳などを使って意識的に勉強することとは違って、意味理解に注意を向けながら英語を読んだり聞いたりする中で結果的に語彙を習得することを、付随的語彙学習(incidental vocabulary learning)といいます。

今回は、英語を読むことと、付随的語彙学習の関係について発表されている研究を参照し、そこからわかっていることや今後の研究課題などをまとめた論文(レビュー論文)であるWaring & Nation (2004)をご紹介したいと思います。

 

 

 

 

はじめに

今回ご紹介させていただく論文データは以下になります。

Waring R., & Nation, P. (2004). Second language reading and incidental vocabulary learning. Angles on the English-Speaking World, 4, 11-23.

https://www.researchgate.net/publication/285872812_Second_Language_Reading_and_Incidental_Vocabulary_Learning

 

多読研究や語彙習得研究の世界的大家でいらっしゃるRob Waring先生Paul Nation先生が、2004年の時点で英語を読むことと、付随的語彙学習の関係についてわかっていることをまとめた、学ぶことが多い貴重な論文です。

 

 

論文の内容のご紹介

この論文でまとめられている主要な点としては以下のことになります。


英文を理解するためには、英文を構成する語彙のどの程度の割合を知っておく必要があるか

No subject reported adequate comprehension of text with only 80% coverage rate, but at 90% and 95% coverage a few did, and only at the 98% level did most subjects gain adequate comprehension.  (p. 12)

つまり、知らない単語を文脈から正しく推測するためには、その周りの98%の語彙を知っておくことがいいということです。98%以上の語彙が分かっている英文であれば、知らない語彙があっても、文脈から推測できるということです。

 

英文を楽しく読むためには、どの程度の語彙サイズが必要か

Laufer (1992) has suggested that a vocabulary of 3000 word families of general English is enough for a good understanding of a general English text such as a novel. Other estimates have been as high as 5000 word families (Hirsh & Nation, 1992) as an adequate level for pleasure reading.  (p. 12)

つまり、3000語~5000語の語彙を知っておくことが、楽しく読める(先ほどの98%の既知語の状況になる)ということです。

ただ、ここで書かれているのは、"word family"なので、単純に1語ではなくて、もっと大きな単位になります。例えば、1 word familyといった場合には、その語の複数形、過去形、ing形、比較級、最上級、所有格などの変化形や、un-, in-や、-ness, -lyなどの接頭辞や接尾辞を含んだ語の派生形も含まれますので、相当な語数になりますよね。

 

何回ぐらいその語に遭遇すれば習得できるか

These findings have direct implications also for the number of times it takes to learn a word. Above we stated that it was about between 6 to10 meetings, but none of this research had decay data... This figure might need to be raised to 20 meetings or more if we take retention beyond the immediate post test as our criteria for learning.  (p. 18)

つまり、研究によって相当差があるようですが、平均的には6~10回の遭遇で習得ができるということです。ただ、6~10回というのは、その語に遭遇した直後のことであって、長期間維持し続けるためには、20回以上の遭遇が必要とのことです。

 

そして、多読を通して語彙習得の効果を高めるための条件として、以下のことが書かれていました。

Thus an extensive reading program of learner self-selected reading where learners read at their own comfortable reading rate with material at an appropriate level is important for incidental vocabulary learning.  (p. 19)

つまり、自分が快適に読めるレベルの本を、自らが選ぶことが、多読で語彙習得効果を高めるために重要だということです。

この2つの助言は、これから自分で多読をする時に心に留めておきたいですね。 

 

最後に

Paul Nation博士の論文は、他にもこのブログで他にもご紹介しています。もしご関心があれば、ご参照ください。

erelc.hatenablog.com

erelc.hatenablog.com

erelc.hatenablog.com

erelc.hatenablog.com

erelc.hatenablog.com

 

今回は、Waring & Nation (2004)の論文のご紹介でした。ここに書いている以上の詳細が気になれば、ぜひ、論文を読んでみてくださいね♪

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬

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