こんにちは♪
はじめに
今日は少し硬い内容ですが、論文の概要をご紹介したいと思います。今回ご紹介させていただくのは、以下の論文です。
Uchihara, T., Webb, S., & Yanagisawa, A. (2019). How useful is repeated exposure to words for vocabulary learning? OASIS Summary of Uchihara et al. in Language Learning. https://oasis-database.org
論文の内容のご紹介
第二言語習得の研究では、多読など、意味に注意を払いながら語彙を習得していくことを、付随的語彙学習(incidental vocabulary learning)といって、単語帳や辞書などを使って語彙を学ぶ意図的語彙学習(intentional vocabulray learning)と区別されます。
この論文では、「語彙を付随的に習得するのに何度くらい繰り返しその語彙に出会えばいいのか」をテーマに発表されたこれまでの論文をレビュー(「メタ分析」といいます)して、繰り返しの回数と、付随的な語彙習得との関係を明らかにしようとした論文です。
これまで、付随的に語彙を習得しようとすれば、その語彙に出会わなければならない回数は、6回、8回、10回、12回、20回以上...と、過去の研究には大きな幅がありました。
この論文では、これまで発表された26本の論文を分析して、繰り返しの回数と、付随的な語彙集との間の相関は中程度(r = .34)と結論づけています。
そして、過去の研究での繰り返しの数の幅は、年齢や語彙知識といった学習者要因や、学習期間や視覚的なサポートを使ったかどうかといった指導要因や、研究の際に実在しない語彙を使ったか、指導後に試験があると伝えたかどうか、テスト形式はどのようなものかといった研究方法要因などから説明できることを述べています。
結論としては、以下のように述べられていました。
The findings demonstrated that although frequency of encounters is an important predictor of incidental vocabulary learning, it is not a single determiner but one of many factors affecting vocabulary learning through meaning-focused input. (p. 589)
つまり、繰り返し回数は、付随的な語彙習得を予測する重要な要素ではありますが、唯一の決定要素ではなく、複数ある要因の一つであるということです。
多読で語彙は増える可能性は高いし、多く読めばそれだけ多くの語彙と出会って習得が進む可能性が高まるけれど、回数だけが全てではないということなのですね。
では、どのような要素を組み合わせて語彙を高めていけばいいのか、これからの研究に期待したいと思います♪
最後に
執筆者のおひとり、Webb先生の研究論文として、Webb & Macalister (2019)やWebb (2008)をご紹介したものもあります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、Happy Reading♬