タドキストによる英語多読ブログ

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「文脈から語の意味を推測しやすい条件とは?品詞とは?」に迫った研究論文Liu & Nation (1985)のご紹介

こんにちは。

蒸し暑くなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。

 

このブログでは、以前、多読で語彙を習得するためには、その語を推測できるような文脈があることが重要であることを示唆したWebb (2008)の論文をご紹介しました。

erelc.hatenablog.com

 

今回は、Webb (2008)と関連する領域の論文で、「文脈から語の意味を推測しやすい条件とは?品詞とは?」に迫った、35年ほどまでの重要な研究論文Liu & Nation (1985)をご紹介したいと思います。

Nation博士は、このブログでも何度か論文をご紹介させていただいた、語彙研究や多読研究の世界的なビッグネームの方です。

 

 

 

論文のデータ

今回ご紹介するのは、以下の論文です。今から35年ほど前に発表された論文ですが、これまで600編ほどの論文などで引用される、たいへん有名な論文です。

Liu, N., & Nation, I.S.P. (1985). Factors affecting guessing vocabulary in context. RELC Journal, 16, 33-42.

https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/003368828501600103?journalCode=rela

 

論文の内容のご紹介

この論文の前提となっている考え方は、以下のように示されています。

There are many low frequency words and their occurrence is largely unpredictable so it is not possible to learn them in advance. Thus dealing with them as they occur is the only feasible way of handling them.  (p. 33)

つまり、頻繁に用いられない語を事前に全て学んでおくことは難しいので、そういった単語に対しては、出合うたびに推測して対処することが現実的な方法である、ということです。

 

この研究では語の意味を推測できる条件を調査するために、短い文章と、長い文章の2種類の英文を2セット用意しました。

その上で、以下のように英文の語彙を調整しました。

  • 短い文章GSL(General Service List)という語彙リストにない語を、英語に存在しない語(nonsense word)に変え、10語につき1語が未知語の英文を作成しました
  • 長い文章GSLと、American University Word Listという語彙リストにない語を、英語に存在しない語に変え、25語につき1語が未知語になる英文を作成しました

つまり、未知語の割合が多い/少ないという状況を作り、この研究の参加者(59名の英語教師)に英文を読んでもらい、未知語の意味を、参加者の母語または英語で答えてもらいました

 

参加者に答えてもらった意味については、3人のジャッジが元の意味に近いかどうかを、100%、80%、0%の3段階で判断しました。

 

この研究の結果の主な要点としては、以下です。

  • Clearly, different unknown word or known word densities affect guessing from context... That is, it is best to make sure that there is plenty of known surrounding context.    (p. 36)
  • The scores show that verbs are the easiest to guess, nouns are next, then adverbs and finally adjectives.  The results could have been affected by the small numbers of adverbs and adjectives but it is unlikely that the order would change if their numbers were increased.  (p. 37)  

つまり、未知語が少ない文脈での方が、語彙の意味を推測できたということです。また、品詞別では、動詞>名詞>副詞>形容詞の順で正しく推測でき、この順番はおそらくそれほど変わらないだろうと述べています。

 

参加者たちの背景知識によって、英文の読みやすさや、未知語の推測の容易さが変わってくることを指摘していますが、未知語を文脈から推測するためには、未知語の周りの語を知っていることが重要ということを示した論文です。それと、品詞別では動詞と名詞が意味の推測をしやすいと述べています。

 

最後に

多読をするにも、ある程度語彙を知っていた方が推測力が高まり、それがまた語彙力の増強につながりそうですね。

 

今回は、「文脈から語の意味を推測しやすい条件とは?品詞とは?」に迫った、35年ほど前の重要な研究論文Liu & Nation (1985)のご紹介でした。

 

ちなみに、

Paul Nation博士の論文は、他にもこのブログで他にもご紹介しています。もしご関心があれば、ご参照ください。

erelc.hatenablog.com

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最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、Happy Reading!!

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