タドキストによる英語多読ブログ

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「簡略化されていない英語の本を読むのに、どのくらいの語彙サイズが必要?」に答える、Hirsh & Nation (1992)の論文のご紹介♪

こんにちは♪

 

以前、このブログで、語彙研究の世界的権威でいらっしゃるPaul Nation博士の論文のうち、Waring & Nation (2004)を紹介させていただきました。

erelc.hatenablog.com

 

今回ご紹介させていただくのは、このWaring & Nation (2004)に先行する論文で、「簡略化されていない英語の本を読むのに、どのくらいの語彙サイズが必要?」に答えるHirsh & Nation (1992)です。つまり、学習者を想定していない「普通の」英語の本を読むための語彙数に迫った研究の一つです。

 

 

はじめに

今回ご紹介させていただく論文データは以下のものになります。出版からすでに30年近く経過した論文ですが、900編ほどの論文などで引用されている、たいへん有名な論文です。

Hirsh, D. and Nation, P. (1992). What vocabulary size is needed to read unsimplified texts for pleasure? Reading in a Foreign Languages, 8(2), 689-696.

https://figshare.com/articles/journal_contribution/What_vocabulary_size_is_needed_toread_unsimplified_texts_for_pleasure_/12560417/1

 

論文の内容のご紹介

英語には数多くの語彙がありますよね。その中で、頻繁に使われる語(例えば、theやofやinやonやbe動詞など)もあれば、それほど使われない語もありますよね。

古典的な研究で、特に高頻度で使われる2,000語ほどの語彙を集めたのが、Michael West先生によるGeneral Service List(GSL)というものです。

 

この研究では、

  • Alice in Wonderland (Carroll, 1865) 26,479語
  • The Pearl (Steinbeck, 1949)                 27,331語
  • The Haunting (Mahy, 1982)       34,909語

という3編の簡略化されていない英文(unsimplified text)88,719語を調査して、2,000語ほどのGSLを身につけていれば楽しく読める(reading for pleasure)かどうかを研究しました。

 

Hirsh & Nation (1992)では、楽しく読めるかどうかの基準として、知っている語が英文の97-98%以上を占めているかを判断材料にとっています。

そして、結論的には、以下のように述べています。

It was found that even when proper nouns are added, a 2000-word general service vocabulary is not sufficient to allow pleasurable reading of a text.  To achieve such reading it is necessary for learners to have a vocabulary of around 5,000 words.  (p. 695)

つまり、GSLの2,000語では簡略化されていない英文を楽しく読むことは難しく、5,000語程度を身につけておく必要があるという主張です。

ちなみに、ここで書かれている5,000語の数え方は、"word family"なので、単純に1語ではなくて、もっと大きな単位になります。例えば、1 word familyといった場合には、その語の複数形、過去形、ing形、比較級、最上級、所有格などの変化形や、un-, in-や、-ness, -lyなどの接頭辞や接尾辞を含んだ語の派生形も含まれますので、5,000ワードファミリーといえば相当な語数になりますよね。

 

そして、GSLの2,000語レベルを身につけた学習者用に、もう少し上のレベルのGraded Readersの開発が必要であることを、以下のように述べています。

Using data from the present study of short novels, it is possible to suggest levels for graded readers beyond the 2,000 level which would make the move to unsimplified novels easier.  (p. 693)

 

現在、世界各国から様々な種類のGraded Readersが出版されていることを考えれば、1992年の時点でこのような提案をしたこの研究の先見性にも、驚いてしまいますね♪

 

最後に

今回は、Hirsh & Nation (1992)の論文のご紹介でした。ここに書いている以上の詳細が気になれば、ぜひ、論文を読んでみてくださいね。

 

Paul Nation博士の論文は、他にもこのブログで他にもご紹介しています。もしご関心があれば、ご参照ください。

erelc.hatenablog.com

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最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬

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