タドキストによる英語多読ブログ

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学習者にとっても「読む」ことが語彙の習得につながることを示唆した研究論文 Pitts, White, & Krashen (1989)のご紹介♪

こんにちは♪

 

このブログで、以前、「多読を行うことで語彙力向上にどのような効果を与えるのか」に関して、Waring & Nation (2004)Cho & Krashen (1994)の論文を紹介させていただきました。

erelc.hatenablog.com

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今回は、読むことが語彙の習得につながることを示唆した論文、Pitts, White, & Krashen (1989)のご紹介をさせていただきます。

 

 

 

論文のデータ

今回ご紹介する論文は、以下です。これまで400編以上の論文などに引用されている、たいへん有名な論文です。

Pitts, M., White, H., & Krashen, S. (1989). Acquiring second language through reading: A replication of the Clockwork Orange study using second language acquires, Reading in a Foreign Language. 5(2), 271-275. 

https://scholarspace.manoa.hawaii.edu/bitstream/10125/67017/1/5_2_10125_67017_rfl52pitts.pdf

 

論文の内容のご紹介

この研究は、Saragi, Nation & Meister (1978)の研究の再現研究です。

Saragi, Nation & Meister (1978)では、英語の母語話者に対して、A Clockwork Orangeという小説を読ませて、この小説内に含まれているロシア語起源の241語の"nadsat"語と呼ばれる俗語(slang)をどの程度習得できたかを研究しました。

母語の場合、かなり多くの語彙を読書から身につけることは、しばしば指摘されています。このことを、英語を(母語としない)第二言語とする方に実験したものが、このPitts, White, & Krashen (1989)の研究です。

 

この研究では、以下の3群を作り、実験群の2群にA Clockwork Orangeの最初の2章(約6,700語の分量)を読ませ、その中にある123の"nadsat"語のうち、20語をテストして、どの程度習得しているかを、テスト(4択式+分からない場合は"I don't know"を使って回答させる形式)を使って調査しました。

  1. 実験群1:35人のESLアメリカで英語を学ぶ)学習者(20歳以上)。60分間のA Clockwork Orangeの読書時間を与えられた後、10分間の休憩をはさみ、テストを実施。
  2. 実験群2:16人のESL学習者(16歳~30歳)。映画版のA Clockwork Orangeの最初の2場面を視聴後、40分間の読書時間を与えられた後、10分間の休憩をはさみ、テストを実施。
  3. 統制群:23人のESL学習者。A Clockwork Orangeを読まず、テストを受ける。

 

このテスト結果として、以下のように報告されています。

Subjects in both experimental groups made small but significant gains in vocabulary.  (p. 274)

つまり、"nadsat"語の習得自体は少ないものの、2つの実験群の方が統制群よりも多くを習得したということです。この結果から、以下のようにまとめています。

 

Our results... show that that adult second language acquirers can also acquire vocabulary by reading, and suggest that reading can be an important source of vocabulary in second language acquisition.   (p. 275)

つまり、第二言語として英語を学ぶ学習者であっても、読書を通して、語彙を学習することができるということを主張しています。

 

私たちのように外国語として英語を学習する人の観点でいえば、多読などの読書活動を通して、徐々に語彙を増やすことができるという、多読の意義にも通じる示唆を与えた論文です。

 

今回はPitts, White, & Krashen (1989)のご紹介でした。

もしこの記事以上のことを知りたい場合は、論文を読んでみてくださいね!

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬

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