こんにちは。
お立ち寄りいただき、ありがとうございます。
以前、このブログで、日本の高校生に10分間の多読を行うことで読解速度の向上が見込めることを示した、Fujita & Noro (2009)の論文をご紹介させていただきました。
今回は、Fujita & Noro (2009)と同様、日本人の高校生を対象に多読指導を行い、読解速度が向上したことを報告した別の論文であるIwahori (2008)をご紹介させていただきます♪
論文のデータ
今回ご紹介する論文は、以下のものです。日本の公立高校で先生をされているIwahori先生が書かれたもので、300以上の論文などで引用されている、とても有名な論文の一つです。
Iwahori, Y. (2008). Developing reading fluency: A study of extensive reading in EFL. Reading in a Foreign Language, 20(1), 70-91.
https://files.eric.ed.gov/fulltext/EJ791535.pdf
論文の内容のご紹介
この研究は、公立高校の2年生33人(女子19人、男子14人)を参加者にして、2006年の6月から8月にかけての7週間(1学期に4週間、夏休みに3週間)の期間で行われました。
研究課題として、以下の2点を設定しました。
Do high school students’ reading rates improve through ER, and if so, to what degree?
Do high school students’ general language proficiency improve through ER, and if so, to what degree?
つまり、日本人高校生を対象に多読を行うことによる、読解速度と、英語全般の能力向上に与える影響について調査することを目的としました。
参加者は、この7週間に、28冊以上読むという課題が与えられました。読むものは、107冊のGraded Readers(200語~1,000語のヘッドワードレベル)と30冊のマンガの中から、好きなものを選びました。
この指導が読解速度に与える効果は、指導の前後で同じ英文を1分間読ませることで、調査しました。英語全般の能力に与える効果は、指導の前後で同じC-Testというものを受けさせることで調査しました。
この研究の結果として、以下のように報告されています。
- The results of the present study showed that high school students’ reading rates improved after a 7-week ER treatment. According to the pretest and posttest results, students’ C-test scores also improved. (p. 81)
- Despite these limitations, the results of this study show that ER improves one aspect of reading fluency and general language proficiency of Japanese high school students with a few books and short treatment period. (p. 83)
つまり、7週間の多読指導を終えて、読解速度も、C-Testのスコア(英語全般の能力)も有意に上がったということです。
また、研究の限界点としては、例えば以下のことが書かれています。
- First, there was no control group.
- there is a possible practice effect on the result of posttests because students took the same reading rate and C-test as a pretest and posttests. (p. 83)
つまり、統制群がなくて、指導前後に同じ試験をしたことで練習効果が出た可能性があったということなどが限界点として報告されています。また、参加者の生徒さんが、何をどの程度読んだのか(GR中心だったのか、マンガ中心だったのかなど)については書かれていませんでした。
最後に
日本の公立高校の生徒さんを対象に、多読を7週間という短い期間であっても、読解速度も英語力も向上したという結果は、高校での英語教育にも大きな意味がありますよね。以前ご紹介したFujita & Noro (2009)と合わせて、多読が読解速度を高める効果は大きそうですし、高校生でもその効果は出るという研究ですね。
ちなみに、このブログでは、日本の高校生を対象にした研究として、Tanaka & Stapleton (2007)の論文を紹介した記事もあります。
今回は研究論文Iwahori (2008)のご紹介でした。公立高校で先生をされながら、このような論文を書かれることもすごいですね!
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、Happy Reading♬