こんにちは♪
お立ち寄りいただき、ありがとうございます。
以前、このブログでは、繰り返しの回数と、付随的な語彙習得との関係を明らかにしようとしたレビュー論文、Uchihara, Webb, & Yanagisawa (2019)をご紹介させていただきました。
今回は、その論文の著者の一人でいらっしゃるStuart Webb先生による論文をご紹介させていただきます。すでに350編以上の論文などで引用されている、大変有名な論文です。
論文のデータ
今回の論文は、以下のものです。
Webb, S. (2008). The effects of context on incidental vocabulary learning. Reading in a Foreign Language, 20(2), 232-245.
https://files.eric.ed.gov/fulltext/EJ815123.pdf
論文の内容のご紹介
多読をしていると、知らない単語(未知語)に出合いますよね。その未知語を習得するのに重要な要因の一つは回数です。なるべく多くその語に遭遇すれば、習得の可能性が高まると言われています。これはわかりやすいですよね。
Webb (2008)は、未知語を習得するには、その未知語の意味を推測できる文脈情報がある方が容易になることを示唆した研究です。
この研究の参加者は、福岡の4つの大学に通う2年生の50人です。この2年生をランダムに実験群と統制群に分けて、以下のような手順で未知語の習得状況を調査しました。
- 10個の実在しない語を作り出し、未知語の条件を作ります。
- それら10個の未知語が入った例文を10文×3セット作ります。
- 例文は、未知語の意味が推測しやすいヒントが入っているものから、推測がほぼ不可能なものまで用意します。
- 文脈情報の多いものから少ないものまで4段階で例文を評価します。
- 実験群:1文目は統制群と同じ例文を与え、2文目、3文目は文脈情報が多いものから順に与えます。
- 統制群:1文目は実験群と同じ例文を与え、2文目、3文目は文脈情報が少ないものから順に与えます。
- 未知語の習得状況の差を、語の形と意味の側面から分析します。
その主要な結果として、以下のように報告されています。
Learners who encountered the target words in the more informative sentences had significantly higher scores on the tests measuring recall of meaning, F(1,49) = 9.96, p < .01, η2 = .17, and recognition of meaning, F(1,49) = 15.59, p < .001, η2 = .25. Differences between the two groups on the tests measuring recall of form, F(1,49) = 0.77, p = .384, η2 = .02, and recognition of form, F(1,49) = 0.97, p = .330, η2 = .02, were not statistically significant. (p. 238)
つまり、文脈情報が多い例文を与えたグループの方が、語の意味の習得の効果が高かったということです。一方、語の形の習得に関しては顕著な差がなかったということです。
この結果から、以下のように示唆しています。
- The results found context to have a significant effect on gaining knowledge of meaning. (p. 238)
- the findings indicate that it may be the number of encounters rather than the quality of encounters that affects learning form. (pp. 238-239)
つまり、語の意味の習得には文脈情報が重要な役割を果たし、語の形の習得には遭遇回数が重要な役割を果たすという可能性を示唆しています。
文脈の中で単語を学ぶことが大切と言われていますが、特に意味の習得の効果を高めることを示唆した研究論文ですね。
最後に
執筆者のStuart Webb先生の論文として、英語ネイティブ用の本は、子ども用であってもなぜ難しいかについて論考したWebb & Macalister (2019)と、Macalister & Webb (2019)を紹介した記事もあります。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、Happy Reading♬