こんにちは♪
お立ち寄りいただき、ありがとうございます。
以前より、このブログでは、語彙研究や多読研究の世界的な第一人者でいらっしゃるPaul Nation博士の論文をいくつか紹介させていただきました。
今回は、Nation先生による、多読で語彙を習得するための指針を示した2015年発表の論文、Nation (2005)の内容をご紹介させていただきます。
論文のデータ
今回ご紹介するのは、以下です。すでに200編近い論文などで引用されている論文です。
Nation, P. (2015). Principles guiding vocabulary learning through extensive reading. Reading in a Foreign Language, 27(1), 136-145.
論文の内容のご紹介
この論文は、語彙学習のために多読を取り入れる理論的な意義と、多読指導で語彙習得の効果を高めるための運用の指針を示したものです。
理論的な意義に関しては、以下の3つの観点から分析しています。
- Lerning Conditions(学習状況)
- The Four Strands(Nation先生が以前から主張されている英語教育の4本柱)
- Cost/Benefit(費用対効果)
また、実践的な多読運用指針については、以下の4つの観点から分析しています。
- Comprehensible Input(理解可能な言語のインプット)
- Quantity of Input(インプットの量)
- Opportunities for Learning(学習機会)
- Maximise the Effects of the Learning Condition(学習条件効果を最大化すること)
以上の観点から分析し、Nation博士が導いた多読による語彙習得のための実践指針は以下の8点です。第一人者による提言なので、すべて挙げさせていただきます。
- include an extensive reading program as a part of your language course(学習コースの中に多読プログラムを組み込むこと)
- make sure that learners spend enough time each week on extensive reading, either around 3/16 of the total course time or better still enough time to meet the words often that they need to learn(全学習時間の3/16程度を満たすよう、毎週十分な時間を多読に当てること)
- make sure that there are two strands to the extensive reading program – (a) the strand where they read texts at the right level for them (around 2% of the running words are unfamiliar), and (b) the fluency strand where they read easy familiar texts quickly(未知語が2%程度の英文テキストを使った多読と、未知語がほぼないテキストで素早く読む多読の両方を行うこと)
- support the fluency development strand by getting learners to do a timed readings course(時間を計測して読むコースを採り入れて流暢性を高めること)
- support vocabulary learning from extensive reading by getting the learners to do dictionary look-up, preferably while reading electronic texts(できれば電子媒体のテキストで読んでいる間に辞書で意味を調べさせること)
- support vocabulary learning from extensive reading by getting the learners to note unfamiliar words on word cards for later independent study(後の自学のために未知語をカードに書き写すことをさせること)
- link some of the extensive reading to extensive listening, and to speaking and writing about what has been read(読むだけでなく、読んだテキストを聴かせたり、その内容を話させたり、書かせたりすること)
- if necessary, provide training in the guessing from context and word card strategies.(必要であれば、文脈や単語カードから語の意味を推測させるトレーニングをすること) (p. 143)
こうしてみると、多読で語彙を習得するためには、多読のみ(読んで終わり)ではなく、その後で辞書で調べたり、カードに書き写したりといった、かなり意識的な語彙学習も必要なことがわかりますね。
英語を読むことが好きな方は、ぜひ、参考にしてみてはいかがでしょうか?
最後に
今回は、多読研究の世界的権威でいらっしゃるNation博士が、多読を通して語彙力を高めるための指針をまとめた論文、Nation (2015)のご紹介でした。
もし、ここに書かれていること以上のことを知りたい場合には、論文を読んでみてくださいね♪
ちなみに、Paul Nation博士の論文は、以前このブログで、Liu & Nation (1985)や、Nation & Hwang (1995)や、Nation & Deweerdt (2001)や、Waring & Nation (2004)や、Nation & Wang (1999)など、他にも紹介させていただきました。もしご関心があれば、合わせてどうぞ♪
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、Happy Reading!!