こんにちは。
お立ち寄りいただき、ありがとうございます。
今回は、ご自身の日本語多読体験を日記から分析し、多読の効果に迫った論文であるLeung (2002)をご紹介させていただきます。
論文のデータ
今回ご紹介するのは、以下の論文です。これまでに170編以上の論文などに引用されている有名な論文の一つです。
Leung, C. Y. (2002). Extensive reading and language learning: A diary study of a beginning learner of Japanese. Reading in a Foreign Language, 14(1), 66-81.
http://www2.hawaii.edu/~readfl/rfl/April2002/leung/leung.pdf
論文の内容のご紹介
この論文は、以下を目的としたものです。
- The purpose of this paper is to explore both the benefits and challenges that one may encounter when engaging in extensive reading as revealed through a learner’s diary study. (p. 67)
つまり、学習者の日記を通して明らかにされる多読の効果と困難さについて探究することです。
そして、この日記を書いたのは、実は著者(Leungさん)ご自身です。
Leungさんは、香港で生まれ、中国語を母語とし、1992年からアメリカやカナダで暮らしている研究者です。
Leungさんが、日本語の多読を自分の意志、ペースに基づいて4カ月間(9週間の第1ステージ+11週間の第2ステージ)行い、学習内容や気になることなどを日記に書き留めました。その日記を、今回の研究資料として用いたということです。
この論文では、以下の4点を研究課題にあげています。
- Does extensive reading lead to vocabulary acquisition? (多読をすることで語彙習得につながるか)
- Does extensive reading promote reading comprehension? (多読をすることで読解力向上につながるか)
- Does extensive reading promote positive attitudes toward reading? (多読をすることで読書に対して積極的な姿勢をもつことにつながるか)
- What challenges does a beginning foreign language learner face in the extensive reading process and how did the learner deal with these challenges? (多読をすることでどのような困難に直面し、どのようにその問題に対処したか)(p. 67)
この4カ月間の日本語多読で、Leungさんは、32冊、1,260ページ(そのうち、480ページはマンガで、170ページは子ども用の教科書、残りは簡単な児童書)を読みました。
また、毎日1時間程度は日本語の学習や読書に当て、週に1回は多読の進捗などについて、先生に報告、相談する機会がありました。
さらに、2ステージ目には、週に1時間程度、Leungさんに日本語学習を支援してくれる方が現れました。
4点の研究課題の究明を、主に日記記録をもとに分析し、主要な結論として、以下のような主張をしています。
- Wendy’s journal entries indicate that extensive reading helped her acquire vocabulary in various ways. First, a large amount of input increased her opportunities to be exposed to words previously learned. (p. 71)
- reading extensively also helped Wendy learn vocabulary incidentally. (p. 72)
- Data from the journal entries show that Wendy’s reading comprehension gradually improved throughout the course of the study. (p. 72)
- An analysis of Wendy’s diary entries indicates that her attitude toward reading Japanese generally became more positive throughout the course of her study. (p. 73)
つまり、多読をすることで、すでに知っている語彙を補強でき、新しい語彙を学習でき、読解力を高めることができ、読書姿勢もより積極的なものになった、と報告しています。
そして、多読をこのように成功させた大きな要因として、自分の関心やレベルに合った本を選べる環境があったことを、以下のように述べています。
- Through this study, we can see that the key element in the success of extensive reading is having access to a large quantity of reading materials geared to an individual's level of proficiency and interest. (p. 78)
最後に
今回の研究の参加者は、あくまでLeungさんおひとり。また、毎日1時間程度は日本語学習に取り組む熱心さを持った方であり、Leungさんの多読を支援する先生や仲間がいたというのも、大きな成果につながるたいへん重要な要素だと思いました。
それでも、これだけ熱心に多読を行い、仲間や先生がいることで、語彙や読解力や読書姿勢まで影響を与えたと報告したこの論文は、多読の大きな可能性を示唆したものだと感じました。
ここに書かれていること以上のことを知りたい場合には、是非、論文を読んでみてくださいね。
今回は、ご自身の日本語多読体験を日記から分析し、多読の効果に迫った論文であるLeung (2002)のご紹介でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、Happy Reading♬