こんにちは。
お立ち寄りいただき、ありがとうございます。
アメリカやイギリスの大学で学ぼうとなったら、専攻が何であれ、高い英語力が必要ですよね。英米などの大学で学びたい方向けの英語学習や、英語教育のことを、English for Academic Purposes (EAP)と呼びます。
具体的には、EAPでは、例えば、アカデミック・ライティングや、アカデミック・プレゼンテーションなど、大学で単位や学位を修得するのに必要な英語を学びます。
今回ご紹介するMacalister (2008)では、ニュージーランドの大学で開講されたEAPの授業の中に多読プログラムを導入した実践報告とその影響についてまとめられています。
論文のデータ
今回ご紹介するのは、以下の論文です。
Macalister, J. (2008). Integrating extensive reading into an English for Academic Purposes program. The Reading Matrix, 8(1), 23-34.
https://readingmatrix.com/articles/macalister/article.pdf?origin%3Dpublication_detail
論文の内容のご紹介
この研究の参加者は、ニュージーランドの大学で12週間のEAPコースに参加した大学生です。対象にしたEAPコースは、全部で3コースで、それぞれのコースの学生は異なり(人数は、それぞれ18名)、いずれも期間は12週間のものでした。
それぞれのコースに対して、以下のような指導を行いました。
- Pilot Study:3時間行われる午前中の授業の最後20分間を授業内多読にあてた。参加者は中国人を中心とした初級の英語学習者18人(19~24歳が中心)。指導者は、Macalister先生。
- Second Class:参加者は韓国人を中心とした上級の英語学習者17人。Extensive Reading Foundation(ERF)がLanguage Learner Literatureとして選出した6冊の中から選び、20分間を多読の時間として与えて読ませた。指導者は、女性の教師。学生の多読に関する感想を記録した。
- Third Class:参加者はインドネシアや韓国などから来た14名の上級英語学習者。学習者の年齢は、過去の2つのコースよりも上。本を読ませる前に、本に関連するテーマについて意見交換をさせた。学生の多読に関する感想を記録した。
このように、12週間のEAPコースということは同じですが、学生は異なるし、多読の指導アプローチはかなり異なるものでしたが、学生たちの反応として、以下のようにまとめています。
- Now, however, all felt positive about the reading experience because (a) they had enjoyed the books and (b) they perceived benefits from reading. Once again, therefore, the decision to include extensive reading as part of the EAP programme appeared to have been vindicated. (p. 30)
つまり、どのプログラムであっても、(たとえ最初は多読に懐疑的であっても)学生さんは読書の楽しさを見出し、読むことによる利点を感じたことで、多読をポジティブな経験と感じたと報告しています。
そして、このことから、以下のように主張しています。
- Given that it has been demonstrated to be possible, and given the known benefits of extensive reading for language learning, it would seem desirable that EAP programmes include such a component. (p. 30)
つまり、EAPプログラムであっても多読を組み込むことが望ましいと主張しています。
また、このプログラムが成功した背景として、以下の主張も見逃せません。
- the programme must be flexible in order to suit the particular learners. Flexibility is also necessary as the evaluation of each iteration of the programme is likely to suggest small changes... (p. 31)
つまり、状況や学習者に応じて、多読指導の方法を柔軟に変えることが成功につながった要因として指摘しています。
最後に
多読は、英語の基礎力養成として取り入れているところが多いと多いと思いますが、英語圏の大学を目指す学生を対象にしたEAPコースでも、学生からの反応はポジティブなものであったことを述べた論文です。
ちなみに、以前、「英語ネイティブ用の本は、子ども用であってもなぜ難しい?」に関する論文として、Webb & Macalister (2019)をご紹介させていただきました。また、英語ネイティブの子ども用の読み物を読みやすくする語彙リストを提案した論文として、Macalister & Webb (2019)も紹介しました。よろしければ、合わせてチェックしてみてくださいね♪
erelc.hatenablog.com
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今回は、Macalister (2008)のご紹介でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、Happy Reading!!