こんにちは♪
お立ち寄りいただき、ありがとうございます。
以前、このブログではGraded Readersとは何かに関する記事を書かせていただきました。また、Graded Readersが英語力に与える可能性に迫ったNation & Deweerdt (2001)や、1993年当時のGraded Readersの出版状況や課題などがわかる研究としてThomas & Hill (1993)も紹介させていただきました。
Graded Readersは読みやすく書かれていますが、それは、主に語彙や文法を制限して書かれているからでした。でも、Graded Readersをよく読まれる方は、同じレベルでも読みやすいものと、読みにくいものがあるのにお気づきのことと思います。
今回ご紹介するGillis-Furutaka先生による論文は、Graded Readersの読みやすさに影響を及ぼす見過ごされやすい要素を研究したものです。
1.論文のデータ
今回ご紹介する論文は、以下のものです。
Gillis-Furutaka, A. (2015). Graded reader readability: Some overlooked aspects. Journal of Extensive Reading, 3(1), 1-19.
https://jalt-publications.org/content/index.php/jer/article/view/7
2.論文の内容のご紹介
この論文は、以下を研究課題に据えて探究したものです。
What aspects of graded reader texts, other than lexis and syntax, impede comprehen-sion by Japanese EFL readers? (p. 6)
つまり、語彙や文法を除き、日本人の英語学習者にとって理解が難しくなるGraded Readersの英文の側面は何か、ということです。
この研究課題を究明するために、以下の方たちを参加者にしました。
- 日本人大学生(京都産業大学の学生さん)30名
- 日本人高校生27名
- 日本人中学生26名
この方たちを対象に、1人1時間程度のインタビューと、think-aloud法によるプロトコルを使って、何が英文の読みにくさにつながったのかを探究しました。
具体的には、読書習慣や、英語読書中に日本語を使うことや、英語学習の目標などについて質問します。その後で、英文を音読してもらい、参加者の英語力を把握します。そして、参加者の英語力に合うと思われるGraded Readersを8分~20分程度読んでもらいます。その後、内容把握の程度をテストし、読んだ英文に対するサマリーなどをしてもらい、分かりにくかった箇所を蛍光ペンで示してもらいました。
この研究の結果、参加者にとってわかりにくく感じたのは、語彙と文法以外として、以下の項目があったことをまとめています。
- Illustrations(イラスト)
- Cultural differences(文化的な差異を含む表現や舞台設定など)
- Pronouns and their referents(代名詞や指示語)
- Idiomatic and figurative expressions(慣用表現や比喩表現)
- Onomatopoeia(擬音語、擬態語)
- Inferences and other literary devices(推論を要する表現など)
- Unexpected changes in the flow of the narrative(予期しない話の展開) (p. 9)
日本人として英語を学ぶ一人として、確かに、これらが分かりにくかったり、あまりに多く使われていると難しく感じます。それは、単に語彙や文法の側面からだけでは測れない難しさですよね。
そして、以下のような記述も残しています。
- The reading experiences reported by these students reveal that measuring the readability of a graded reader text is far more complicated than limiting the number of headwords and grammatical structures.
- This study shows that it is unwise to rely only upon the evaluation of native speaker readers. (p. 16)
つまり、読みやすいGraded Readersを作るというのは、語彙や文法だけを制限すればいいという話ではなく、とても複雑な作業が必要とされるということ。それに、何が難しいかは、(ネイティブではなく、例えば日本人のような)学習者の視点を入れなければわからないという指摘です。
3.最後に
先に引用した、2点目の記述は特に心に残りました。
Graded Readersというのは、英語を学習している人向けのものなので、ネイティブの人が英語を書くにしても、学習者の視点を入れなければ、良いものができない、という指摘です。私たちも、日本語を学習している方たちに、どの日本語が難しいのは、その人に聞いてみないとわからないですしね。
その意味でも、日本人の学習者の意見に丁寧に耳を傾けてくださったGillis-Furutaka先生の研究の姿勢に、嬉しい思いになりました♬
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、Happy Reading♬