こんにちは。
お立ち寄りいただき、ありがとうございます。
今回は、「リスニングのみと、リスニング+エクササイズのどちらが効果的、効率的?」に迫った論文、Mason & Krashen (2004)をご紹介したいと思います。
論文のデータ
今回ご紹介するのは、以下の論文です。100編以上の論文などで引用されています。
Mason, B., Krashen, S. (2004). Is form-focused vocabulary instruction worthwhile? RELC Journal, 35(2), 179-185.
http://benikomason.net/content/articles/is_form-focused_vocabulary_instruction_worth_while.pdf
論文の内容のご紹介
この研究の参加者は、大阪にある短大1年生(全員女子)58人。全員日本語を母語とする英語学習者です。
この学生さんたちを、2つのグループに分けて、指導を変えました。
- Story-only group(27人):20語のターゲットとなる単語(学生さんに覚えてほしい単語)を黒板に書き、その単語が入ったお話The Three Little Pigsを、著者が15分かけて読みました。読む時間(指導時間)は15分でした。
- Story-plus-study group (31名):Story-only groupと同じ指導をとった後、内容把握問題が口頭で問われ、紙に印刷されたバージョンのThe Three Little Pigsを読みました。その後、ペアになってお話の要点を話す活動を行いました。その際、黒板に書かれていた20語を使って話すよう指導をされました。これらすべての指導時間は85分でした。
このように指導を変えた後、その効果を、プレテスト、直後のポストテスト、5週間後の遅延テスト(語彙の翻訳のテスト)を行うことで検証しました。
その結果は、以下のようになりました。
- Story-only group:4.6(プレ) 13.9(ポスト) 8.4 (遅延)
- Story-plus-study group:4.7(プレ) 15.1(ポスト) 16.1(遅延)
つまり、遅延テストで、様々な活動を行ったstory-plus-study groupの方が顕著に良い成績となったのです。
しかし、この研究では、この結果を、時間当たりに習得した語彙の数(効率性)の観点からも分析しています。その結果は、以下のようになっています。
- Story-only group:.62(プレ) -(ポスト) .25 (遅延)
- Story-plus-study group:.42(プレ) .23(ポスト) .16(遅延)
これらの結果から、以下のようにまとめています。
- The story-plus-study grouped clearly learned more words than the story-only group, getting approximately double the score of the story-only group on the delayed posttest. But they also devoted a lot more time to vocabulary learning. Calculations of words learned per minute revealed that the story-only group learned words much more efficiently, at least double the rate of the story plus study group.
つまり、story-plus-study groupの方が語彙の習得数は多かったが、時間効率の観点からは、story-onlyの方がいい、ということです。
この論文を読んでいて、
- 指導時間が異なるのに、同じ語彙をターゲットにしているので、時間効率が落ちるのは当然であるように感じること
- リスニングのみといっても、黒板にターゲットの単語を書き出しているために、付随的な語彙学習とはいえないように感じること
などが気になりましたが、みなさんはいかがでしょうか?
最後に
今回の著者のStephen Krashen先生の論文については、これまでいくつか紹介した記事もありますので、以下に再掲させていただきます。
ここで紹介した以上のことが知りたい場合には、ぜひ、論文を読んでみてくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、Happy Reading♬