こんにちは!
お立ち寄りいただき、ありがとうございます。
今回は、多読が英語習得に果たす大きな役割を世界に知らしめることになった、たいへん重要で、有名な論文の1つ、Mason & Krashen (1997)をご紹介させていただきます。
論文のデータ
今回ご紹介する論文は、以下のものです。多読研究において、非常に多くの論文などで参照、引用されている論文です。
Mason, B., & Krashen, S. (1997). Extensive reading in English as a foreign language. System, 25(1), 91-102.
論文の内容のご紹介
この論文の中では、3つの実証研究が含まれています。
研究1
参加者と指導内容は、以下の通りです。
- 実験群:大阪にある女子大学に通う大学2,3,4年生を対象にした再履修クラスを履修している30人のうち、ランダムに選出した20名。この学生を対象に週に1回、90分の多読授業を1学期間行い、その結果、Graded Readersを平均で30冊ほど読みました。
- 対照群:再履修に該当していない大学2年生からランダムに選出した20名。伝統的な精読による授業を行いました。
この指導の違いを、100問から成るクローズテストを、指導前と指導後に行うことで調査しました。
その結果は以下の通りでした。
- 実験群:22.55(プレテスト平均)→31.40(ポストテスト平均) 8.90点上昇
- 対照群:29.70(プレテスト平均)→330.5(ポストテスト平均) 4.35点上昇
つまり、多読を行ったグループの方がスコアの上昇が有意に高かったと報告しています。さらに、多読を行った実験群では学習姿勢が向上したことも以下のように報告されています。
- Perhaps the most important and impressive finding of this study is the clear improvement in attitude shown by the experimental students. (p. 93)
研究2
参加者と指導内容は、以下の通りです。
- 実験群:4年制大学に通う40名と、短大に通う31名。Graded Readersを読み、本を読み終わるごとに本の要約を英語で1~半ページの長さで書かせた。
- 統制群:4年制大学に通う29名と、短大に通う18名。伝統的な精読を中心とする指導を行った。
この指導を1年間行い、研究1と同じように、100問から成るクローズテストを指導前後に行うことで、指導の効果の差を検証しました。
その結果は、以下のようになりました。
- 実験群(大学生):29.55(プレ平均)→48.08(ポスト平均)18.85点上昇
- 実験群(短大生):16.74(プレ平均)→33.71(ポスト平均)17.06点上昇
- 対照群(大学生):31.30(プレ平均)→41.88(ポスト平均)10.59点上昇
- 対照群(短大生):17.56(プレ平均)→25.69(ポスト平均)7.50点上昇
また、実験群の参加者が最初に書いた英語の要約、最後に書いた英語の要約を比較し、最後に書いた要約の方が質がいいものであったことを報告した上で、以下のように述べています。
- the results on our measure of writing confirm that improvement in writing is possible without conscious learning... (p. 95)
つまり、意識的に書くことを学ばずとも、英語を書く力が多読で伸びる可能性があることを指摘しています。
研究3
参加者と指導内容は、以下の通りです。指導期間は1年間です。
- 実験群1:多読を行い、本を読むごとに、その要約を英語で書かせた。
- 実験群2:多読を行い、本を読むごとに、その要約を日本語で書かせた。
- 対照群:文の語や意味に注意するエクササイズを中心とした指導を行った。
この指導の差を、研究1、研究2と同じ100問から成るクローズテストで検証しただけでなく、英文読解力や、ライティングの質や、読解速度の点からも検証しました。
その主な結果は以下の通りです。
- クローズテストでは、実験群1が有意に対照群よりも有意に上昇した。
- 英文読解では、実験群2つが対照群よりも有意に良い成績だった。
- ライティングでは、実験群2の質の向上で最も大きかった。
- 読解速度では、実験群2が最も上昇値が大きかった。
これらの結果から、多読が読解力や、英語への態度や、ライティングや読解速度への向上が期待できることを主張しています。
最後に
今回は、多読の効果を示した研究として、しばしば引用されるMason & Krashen (1997)をご紹介させていただきました。
この論文を読んでいると、
- 多読に参加した人たちが、どのような本を、どの程度読んだのかがはっきりわからないこと
- 要約の質を決める項目が曖昧であること(全体的な印象という1つの観点からの検証であること)
などが気になりますが、20世紀に行われた初期の多読研究として、今後も多くの方に読み継がれる研究になるのではと思いました。
なお、このブログでは、多読に関連する研究論文の内容をご紹介したまとめ記事がありますので、よろしければ、参照用としてどうぞ。
ちなみに、この論文の著者のお一人でいらっしゃるKrashen先生の他の論文も、以前このブログでご紹介したことがありますので、下に再掲させていただきます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、Happy Reading♬