タドキストによる英語多読ブログ

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日本人高校生の多読に向かわせる動機づけに迫った論文 Takase (2007)のご紹介

こんにちは♪

お立ち寄りいただき、ありがとうございます。

 

今回は、日本における多読研究の第一人者のお一人でいらっしゃる高瀬先生による、日本人高校生の多読に向かわせる動機づけに迫った論文のTakase (2007)をご紹介させていただきます。

 

 

論文のデータ

今回ご紹介する論文は、以下です。これまで300編近くの論文などに引用されている、たいへん有名な論文です。

Takase, A. (2007). Japanese high school students’ motivation for extensive L2 reading. Reading in a Foreign Language, 19(1), 1-18.

https://files.eric.ed.gov/fulltext/EJ759837.pdf

 

論文の内容のご紹介

この研究の参加者は、日本の女子高校に通っていた2年生219名です。

Takase先生の「Reading」の授業を受けた生徒さんたちで、3年間にわたってデータが回収されました。

「Reading」の授業は45分の授業が週に2回ありましたが、授業で多読の時間は取らず、授業外でGraded Readersを読むように指導されました。指導期間は1年間です。

 

この指導を行い、以下の3つの課題を究明したのが本論文です。なお、この課題を究明するために、多読開始後1か月後に、英語の読書に関するアンケート(27問)と、日本語の読書に関するアンケート(18問)を実施しました。

  1. What are the components of L2 reading motivation for this sample of Japanese high school students? (高校生の多読の動機となる要因は何か)
  2. What components predict the high school students’ motivation to read English books? (どの要因が多読の動機と強く関わるか)
  3. What is the relationship between the participants’ reading motivation and performance in Japanese and English?    (日本語と英語における読むことに対する動機づけや読書量の関係は何か) (p. 3)

 

因子分析など様々な分析を行い、研究課題1に対しては、以下の6つの要因を抽出しました。

  • Component 1: Intrinsic motivation for L1 reading
  • Component 2: Intrinsic motivation for L2 reading
  • Component 3: Parents' involvement in and family attitudes toward reading
  • Component 4: Entrance exam-related extrinsic motivation
  • Component 5: Fondness for written materials
  • Component 6: Internet-related instrumental motivation & negative attitude toward extensive reading    (pp. 7-8)

つまり、多読への積極性を左右する要因としては、①日本語読書への内発的な動機づけ、②英語読書への内発的な動機づけ、③両親や家族の関わりや読書への態度、④入試に関連した外発的動機づけ、⑤書かれたものへの愛着、⑥インターネットに関連した道具的な動機づけや多読への負の感情、という6要因でした。

 

その上で、研究課題2と、研究課題3については、以下のようにまとめられています。

  • The best predictors of reading books in the L2 were intrinsic motivation for L2 reading and intrinsic motivation for L1 reading. However, reading performance in the L1 and L2 did not correlate partly because of the insufficient L2 reading proficiency of some of the most voracious readers of Japanese books. On the other hand, participants who had not developed positive L1 reading habits experienced a great sense of joy and accomplishment after finishing an entire English book, and this feeling sustained their reading in the L2 throughout the year. However, this sense of joy and accomplishment was limited to L2 reading and did not influence L1 reading motivation.  (p. 12)

つまり、多読に向かう積極性に特に影響を与えたのは、「日本語読書への内発的な動機づけ」と、「英語読書への内発的な動機づけ」というものだった、と報告しています。ただし、この2つの要因は互いに関連し合っていない、ということです。

要するに、日本語読書が好きだったり、英語読書が好きだったりすることが、多読の積極性に影響を与えるけれども、日本語読書が好きだからと言って英語読書が好きとは限らないし、英語読書が好きだからといって日本語で本を読むとも限らない、ということです。

 

最後に

この研究では、日本語で本を読むことや、英語で本を読むことが好きであることが、多読を動機づける要因となるけれど、日本語の読書への積極性と英語の読書への積極性は相関していないという、興味深い関係を示唆してくれました。

 

何とも複雑ですね。

ただ、言われてみれば、日本語で読書が好きな人が、そのまま英語の多読にはまるとは限らないことは、そうだろうという感じもしますね。

 

今回は、日本人高校生を多読に向かわせる動機づけに迫ったTakase (2007)をご紹介しました。もし、ここに書かれている以上のことが知りたい場合は、論文を読んでみてくださいね。

 

ちなみに、高瀬先生のご著書で、多読指導者は必読の以下の本がありますので、合わせてご紹介させていただきます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬ 

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