タドキストによる英語多読ブログ

1000万語以上の多読経験をもとに、多読の魅力を発信するブログです!本には魅力がいっぱい。英語の本を通して、人生を深く、豊かなものに。

日本人高校生に寄り添った多読実践を報告した論文、Powell (2005)のご紹介

こんにちは。

お立ち寄りいただき、ありがとうございます。

 

今回は、日本人高校生に寄り添った多読実践を報告した論文のPowell (2005)をご紹介させていただきます。

 

 

論文のデータ

今回ご紹介するのは、以下の論文です。今から15年以上も前に発表された論文です。

Powell, S. (2005). Extensive reading and its role in Japanese high schools. The Reading Matrix, 5(2), 28-42.

https://readingmatrix.com/articles/powell/article.pdf

 

論文の内容のご紹介

この論文は、著者のPowell先生が勤務されていた比治山高校で、英語専攻の高校3年生を対象に、"home reading"と呼ばれる多読プログラムを開始した1年目の実践を報告したものです。

 

この"home reading"では、生徒に最低限読むべき量は設けず、なるべく多くの英語を読むように声をかけ、1冊読み終わるごとに著者のPowell先生と話をして、生徒さんに適したレベルやジャンルの本を紹介する指導を取りました。

 

そして、生徒がこの多読(home reading)プログラムに対して、どのように感じたのかを、アンケートで調査しました。具体的には、以下の6点を明らかにするためのアンケートを作成、実施しました。

  1. Has their attitude towards reading changed since starting the ER programme? (多読の開始後、生徒の読むことに対する姿勢は変わったか)
  2. Did students feel the ER programme was beneficial? (生徒は多読が有益だと感じたか)
  3. Was ER enjoyable? (多読は楽しいものだったか)
  4. Did students voluntarily undertake any other English reading? (生徒は自主的に他の英語の読書に取り組んだか)
  5. If so, what material did they most enjoy reading outside school? (もしそうならば、何を学校の外で読んだのか)
  6. Did they feel motivated to carry on reading in English in the future?   (生徒は今後も英語での読書を続けたいと感じたか) (p. 32) 

 

そして、この実践の対象者は限られていて、一般化はできないことを申し添えた上で、アンケートの結果を以下のようにまとめています。

  • the general impression gained from this survey is that a majority of students did find the programme very useful, even if it did become difficult to maintain, alongside their other work in their third year. The survey also provided some useful insights into students’ attitudes. Not only did the majority of students apparently come to enjoy and benefit from home reading but also, having developed the reading habit, many voluntarily went on to engage in reading tasks of their own choice, according to their interests. Furthermore, it appears that they intend to keep up their reading habit after they have left school.  (p. 35)

つまり、大多数は多読は有益であると感じ、次第に英語を読むことを楽しむようになり、自律的に自分の関心に応じた本を読むようになり、授業が終わった後でも英語読書を続けたいと言っている、とまとめています。

 

このように、日本人の高校3年生を対象に、英語多読は概ね受け入れられたことを報告しています。

ただ、受験を控えた高校3年生への多読は、一部の生徒からの反発があったことも、以下のように報告しています。

  • In short, given high school students’ already heavy workload, it is not always easy to convince them of the benefits of undertaking extra, “voluntary” reading, no matter how enjoyable we suppose it to be.   (p. 34)

つまり、受験生としてやるべきことがたくさんある中で、付加としての多読を、自主性に行うよう説得することが難しい、と述べています。

 

しかし、このような困難さを持ちながら、多くの生徒の信頼を勝ち取ったのは、Powell先生が生徒とのコミュニケーションを重視し、お薦めの本を紹介し合う活動や、ちょっと競争心をくすぐる企画も取り入れながら、生徒に寄り添い、指導されていたからであるという印象を受ける論文です。

 

実際、多読を進める上で、生徒とのコミュニケーションの重要性については、以下の一節に表されていますので、引用します。

  • this underlines the importance of communicating with students, taking time to find out what they enjoy reading and, indeed, if they enjoy reading at all. (p. 34)

つまり、時間を取ってコミュニケーションを取り、生徒が何を好きか、そして読むことを楽しんでいるのかを把握することの重要性が説かれています。

 

最後に

生徒に寄り添ってきめ細かい指導ができるPowell先生に受け持たれた生徒たちは幸せだなと感じてしまう論文でした。

 

ここで思い出したのが、以前ご紹介した、授業外での自主的な多読を導くのは指導者であることを示唆した、日本人研究者による論文のYoshizawa, Takase, & Otsuki (2013)です。

erelc.hatenablog.com

 

多読は生徒中心の活動とよく耳にしますが、生徒が中心になれるよう、水面下で適切に導くのは指導者なんだな~、と感じてしまいますね。教育って、やっぱり重要ですし、教育に携わる先生方の存在って大きいですね。

 

ここに書かれていること以上のことを知りたい場合には、是非、論文を読んでみてくださいね。

 

今回は、日本人高校生に寄り添った多読実践を報告した論文のPowell (2005)のご紹介でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬

プライバシーポリシー お問い合わせ