こんにちは。
お立ち寄りいただき、ありがとうございます。
今回は、イタリア人大学生を対象にして、多読の頻度と姿勢と相関のある要因に迫った研究をご紹介したいと思います。
論文のデータ
今回ご紹介するのは、以下の論文です。すでに150編以上の論文などで引用されている論文です。
Camiciottoli, B. C. (2001). Extensive reading in English: Habits and attitudes of a group of Italian university EFL students. Journal of Research in Reading, 24(2), 135-153.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/1467-9817.00137
論文の内容のご紹介
「多読に熱心に取り組む」と聞くと、どんな人のことを思い浮かべますか?
おそらく、毎日のように英語の本を読むだけでなく、英語の本を読むことを楽しんでいる方のことではないでしょうか?
もう少し具体的に書くと、多読をする頻度(frequency)と、多読をする時の姿勢や態度(attitude)の点から説明できそうですよね。
この論文は、多読の取り組みの熱心さ、具体的には、多読を行う頻度と、多読をする時の姿勢と、関連性の強い要因は何かに関して、アンケート調査を使って迫ったものです。つまり、多読を熱心に取り組む人たちに見られる要素は何か、しっかりした研究手法を使って迫った論文です。
この研究の参加者は、イタリアのフィレンツェ大学でビジネスを専攻する182人(男性93人、女性89人)の英語学習者です。
アンケートは3部構成で全部で22の質問項目です。その3部の構成は、以下のようになっています。それぞれの質問に対して4段階で回答してもらいました。
- Part 1:これまでの英語学習経験や、英語圏への滞在経験など、一般的なデータを調査する10項目
- Part 2:どのくらいの頻度で、英語の本や、イタリア語(参加者の母語)の本を読んでいるかを調査する5項目
- Part 3:読書を楽しんでいるか、どのような本を読んでいるかなどを調査する7項目。
このアンケートで得られたデータを使い、頻度や姿勢と、相関のある要因を回帰分析を使って分析しました。
その主要な結果として、多読の頻度と姿勢と関連した要因として、以下のように、2つを挙げています。
- From the multiple regression analysis, it seems that two factors have a determining influence since they were significantly correlated with both attitude and frequency. The first, relating to the habit of reading books in Italian, would seem to support the idea that the factors that apparently contribute to moulding a person into a `reader' in L1 can also be transferred into reading in a foreign language... The strength of the second factor ('experience in the target language culture') can perhaps be explained in two ways. (p. 147)
つまり、1つは、母語のイタリア語での読書で多くの楽しい時間を費やしていた学習者ほど、英語の多読を積極的に行う傾向が有意に高かったことを述べています。
そしてもう1つは、英語圏への特に勉強や仕事での滞在経験がある人ほど、多読も積極的に行ったということを報告しています。
私たちの文脈で分かりやすく言ってしまえば、日本語の読書を楽しんでいる人や、英語圏へ留学や仕事で行った経験のある人の方が、多読への取り組みが熱心(頻繁で、楽しんでいる)である傾向が有意に高い、ということに置き換えられることになります。
最後に
英語を上達させたいと思う方や、多読を頑張りたいと思う方はたくさんいらっしゃると思いますが、その中でも、人によって取り組みに差がありますよね。
そういった差を生じさせる要素として、今回は、母語での読書経験と、英語圏での滞在経験ということが指摘された論文でした。
言われてみると、確かにと思える結果のような気もしますね。
関連した論文で、日本語での読書経験と、英語多読の取り組みの間の相関を調査した論文のTakase (2007)もありました。こちらも以下に再掲させていただきます。
研究をしても、なかなかはっきりとはわからないものなのですね。
ここで紹介した以上のことが知りたい場合には、ぜひ、論文を読んでみてくださいね。
今回は、イタリア人大学生を対象にして、多読の頻度と姿勢と相関のある要因に迫った論文のCamiciottoli (2001)のご紹介でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、Happy Reading♬