タドキストによる英語多読ブログ

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日本人の高校生を対象に実践した初期の多読の効果研究 Tanaka & Stapleton (2007)の論文のご紹介♪

こんにちは♪

 

このブログでは、これまで多読の効果に関する研究論文についてもいくつかご紹介させていただきました。研究論文を見渡すと、全体的には大学生を対象に多読指導を行った研究を扱っているものが多い印象があります。

 

 

はじめに

今回ご紹介させていただく以下の論文は、現在に比べて多読研究の論文が少なく、多読指導方法についても十分に整備されていない2007年の時点で、日本人の高校生を対象にした貴重な論文です。これまで140編以上の論文などで引用されている論文でもあります。

 

Tanaka, H., & Stapleton, P. (2007). Increasing reading input in Japanese high school EFL classrooms: An empirical study exploring the efficacy of extensive reading. The Reading Matrix, 7(1), 115-131.

https://eric.ed.gov/?id=EJ1066583

 

 

論文の内容のご紹介

この実践の背景としては、北海道の公立高校で教鞭をとられる、この論文の筆頭著者のTanaka先生が、生徒が接する英語の量が少ないという問題意識をお持ちになったことがあります。そこで、96名の高校生を対象に、授業の最初の5~10分を"Home Reading Program"という活動に当てることにしました。

 

このHome Reading Programとは、Tanaka先生が作成または教材から選んだ英文38編(各編の英文分量の平均は171.2語)を、必要に応じて中学校レベルの語彙に変えて生徒に読みやすくした素材を使用します。そして、その素材を次の授業までに読んでくるように伝え、授業の最初の5~10分で音読したり、読んだ経験を共有したりする活動を行いました。この活動を、10月~3月まで続ける指導を行いました。

 

また、このHome Reading Programというのは、Graded Readersの一番下のレベルを流暢に読むことが難しい生徒さんに向けてのもので、Graded Readersをスムーズに読める生徒はOxford Bookworms Library(OBW)シリーズなどのGraded Readersを使いました。生徒さんたちは、この6か月間の活動で、6,505語の英文を読みました

 

この効果を、英検を使ってプレテストとポストテストの差で検証しました。

 

この結果は、このHome Reading Programを採り入れた生徒さんの英文読解力と、読解速度が、採り入れない生徒さんと比較して有意に高まったというものでした。また、Tanaka先生が作成された教材よりもGraded Readersを読んだ生徒さんの方が効果が大きかったことも報告されています。

つまり、6,500語程度の英語でも授業外に読ませることで、高校生の英文読解力と読解速度を高める可能性を示唆した論文ということになりますね。

 

 

最後に

論文を読むと、

  • 授業のHome Reading Programで5~10分の時間を取った後は教科書を使った授業なので、その指導の影響が少なからず結果に与えている可能性があること
  • Graded Readersを読んだ生徒さんは、どのようなレベルのものを何冊(何語)読んだのかについてはふれられていないこと
  • 6カ月で6,500語程度では分量がかなり少ないこと
  • 英文の読解速度を、WPM(Words Per Minute)ではなく、英検の問題の回答数で測っていること

などが気にはなりましたが、多読指導の整備が十分でない2007年当時に、これだけの手間暇をかけた実践をされたこと、高校という指導内容が決められている中で工夫してHome Reading Programを採り入れたことが素晴らしいですね。こういった先生方の熱意と行動が生徒さんの英語力向上につながることは、嬉しいことです♪

 

この研究が気になった方は、ぜひ、原典を読んでみてくださいね!

 

ちなみに、日本人の高校生を対象にした研究としては、Fujita &  Noro (2009)や、Iwahori (2008)をご紹介した記事もあります。

erelc.hatenablog.com

erelc.hatenablog.com

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬

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