タドキストによる英語多読ブログ

1000万語以上の多読経験をもとに、多読の魅力を発信するブログです!本には魅力がいっぱい。英語の本を通して、人生を深く、豊かなものに。

授業外で多読に向かわせるための考えるヒントをいただける Takahashi & Umino (2020)の論文のご紹介♪

こんにちは♪

 

以前、以下の記事で、豊田高専における多読の取り組みについてご紹介させていただきました。そして、TOEICのスコア向上という点で高い成果を上げている背景には、長期間多読を継続している点があることをご紹介させていただきました。

erelc.hatenablog.com

 

 

1.はじめに

英語(日本語)多読って、文字通り、「多くの英語(日本語)を読む」こと。でも、酒井邦秀先生が提唱された100万語を読もうとすれば、それ相応の時間がかかるのも事実ですよね。つまり、指導者の視点からすれば、「多読」を実現するためには、いかに授業外で自律的に読む習慣を身につけさせられるかがとっても重要になりますよね。

 

今回ご紹介するのは、授業外で多読に向かわせるためのヒントをいただける論文、Takahashi & Umino (2020)です。

 

Takahashi, W., & Umino, T. (2020). Out-of-class extensive reading in Japanese as a second language: Enhancing learner autonomy beyond the classroom. Electronic Journal of foreign language teaching, 17(1), 50-63.

https://e-flt.nus.edu.sg/wp-content/uploads/2020/09/takahashi.pdf

 

2.論文の内容のご紹介 

この研究では、まず多読(Extensive Reading, ER)を3つの段階に分けています

  1. classroom-based ER: 教員のシラバスに基づいた教室を中心とした多読
  2. out-of-class ER: 教員が授業外での多読機会を設定するが、参加や読書量などに関して成績や単位などには関係ない多読
  3. autonomous out-of-ER: 授業外で学習者の自律性に基づいた多読

 

そして、この研究の下地になった活動は、東京外国語大学で2014年に始まった、留学生を対象にした日本語多読の"out-of-ER"プログラムの一つ、"Extensive Reading Session in Japanese" (ERSJ)です。

 

この研究の参加者は、ERSJに2015年4月から7月にかけて参加した6名の日本語学習者。この6名に対して、半構造化インタビューを2回行いました。

  1. ステージ1:ERSJ直後の2015年7月に6名全員に行う。
  2. ステージ2:ERSJ終了7か月後の2016年2月に6名中4名(うち、1名はこの時点でもERSJに参加中だったため、研究対象から除外)に行う。

そして、この2回のインタビューを通して、多読の継続状況などを調査し、参加者の学習自律性(learner autonomy)を探究しました。

 

なお、学習自律性については、先行研究(Benson , 2011)による以下の3つの観点を採用し、多読がどの程度自律的に行われるようになったのかを分析しています。

  1. learning management(学習管理)
  2. cognitive process(認知プロセス)
  3. learning content(学習内容)

そして、参加者のインタビュー結果をこの3観点から分析し、学習者の自律性について探究を行っています。

 

結果としては、ステージ2の時点でも、3名中2名が多読を継続していたという結果でした。しかも、3名全員が以前よりも読む量が増えていると回答したということ。

 

3.最後に

この研究の参加者数は少ないので、あくまで事例研究として捉えるべきだと思いますが、それにしても、多読の授業が終わった途端に読まなくなってしまうことは、多くの指導者が抱えている悩みだと思います。その中で、かなり成果の上がった研究ではないでしょうか。

ある種、強制的に誰もが学ばされる言語である英語での多読と、強い興味や関心を持った人が選択的に学習する日本語での多読で、学習者の動機づけ(learning motivataion)が違う可能性はありますが、それにしても、この結果は目を見張るものがありますね♪

 

実際、この論文では、自律的に多読をした方たちは、隙間時間を利用して多読を気軽に進めたことや、「辞書は使わない」という原則に抵抗を示した方も多く、辞書で必要最低限の語は調べていたことなど、先に書いた3つの観点に基づき、興味深い分析もされていますので、英語の多読であっても応用可能な視点をもらえますね。

それに、"autonomous out-of-ER"へつなげるのに寄与した、ERSJの"out-of-ER"の取り組みも素晴らしいですね。

 

今回は、Takahashi & Umino (2020)の論文のご紹介でした。ここに書いている以上の詳細が気になれば、ぜひ、論文を読んでみてくださいね♪

 

 最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬

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