タドキストによる英語多読ブログ

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アメリカの大学生を対象に、多読授業が楽しく、効果的だと支持されることを示したMcQuillan (1994)とDupuy (1997)の研究のご紹介

こんにちは♪

お立ち寄りいただき、ありがとうございます。

多読授業がいろいろな学校で行われていると思いますが、生徒さんからも「楽しい」とか「効果的」と支持されることが多いこともよく聞きますよね。これは、国内外を問わない傾向のようです。

 

今回は、多読授業が文法授業よりも、学生さんから楽しく、効果的だと受け入れられたと報告した、アメリカの大学生を対象にした研究を2つご紹介します

 

 

 

論文のデータ

今回ご紹介するのは、以下の2つの論文です。

1つは、アメリカの南カリフォルニア大学に勤務されているMcQuillan先生による研究で、もう1つは、アメリカのルイジアナ州立大学に勤務されているDupuy先生による論文です。

ちなみに、Dupuy先生による研究は、McQuillan先生による研究を再現した、再現研究(replication study)です。どちらも、Applied Language Learningという学術雑誌に発表された論文です。

 

McQuillan, J. (1994). Reading versus grammar: What students think is pleasurable for language acquisition. Applied Language Learning, 5(2), 95-100.

https://www.researchgate.net/publication/234576699_Reading_versus_Grammar_What_Students_Think_Is_Pleasurable_and_Beneficial_for_Language_Acquisition

 

Dupuy, B.C. (1997). Voices from the classroom: Intermediate-level French students favor extensive reading over grammar and give their reasons. Applied Language Learning, 8(2), 285-293.

https://www.researchgate.net/publication/234773062_Voices_from_the_Classroom_Intermediate-Level_French_Students_Favor_Extensive_Reading_Over_Grammar_and_Give_Their_Reasons

 

論文の内容のご紹介

McQuillan (1994)

この研究の参加者は、以下の2グループ、合計49名(男性17名、女性32名)です。

  1. Group1アメリカで英語を学ぶ大学生(ESL学習者)16名(男性5名、女性11名、平均27.5歳)
  2. Group2アメリカでスペイン語を学ぶ大学生(SFL学習者)33名(男性12名、女性21名、平均23歳)

 

この参加者たちは、10週間の以下のコースを受講しました。

  1. Group1新聞、雑誌、短編、Graded Readers、小説などを読み、読んだものについてのディスカッション 【多読のみ】
  2. Group2新聞、雑誌、短編、Graded Readers、小説などを読み、読んだものについてのディスカッションに加え、授業時間の15%未満の時間の文法指導 【多読+文法】

 

そして、10週間のコースの後で、多読と、伝統的な文法指導と、どちらの方が、楽しく(pleasurable)、言語学習に効果的(beneficial)と感じ、どちらの授業スタイルを好むか(preference)を、アンケートを通して調査しました。

 

その結果の要点は、以下の記述で見ることができます。

  • ... given an opportunity to experience both popular reading materials and grammar instruction, the overwhelming majority of the students found reading to be superior to traditional instruction not only in terms of pleasure, but also in perceived benefits in language acquisition.   (p. 98)

つまり、アメリカの大学で外国語を学ぶ49名の大多数が、多読授業の方が、文法授業よりも楽しく、言語習得に効果的だと感じたということです。

 

Dupuy (1997)

Dupuy (1997)の研究は、McQuillan (1994)の再現研究です。Dupuy (1997)の研究では、以下の学生さんを参加者にしました。

  • アメリカ南部の公立大学に通う大学生で、フランス語を外国語として学習している(FFL)3クラス、合わせて49人

 

この3クラスでは、以下のような指導を行いました。

指導期間は15週間で、毎週3時間フランス語の授業がありました。

  • 授業の90%以上:フランス語で書かれた短編、詩、物語、小説、歌、新聞、雑誌などを読み、読んだものについてディスカッションした。読む素材は、教師が選ぶものと、学生さん自身が選ぶものとありました。【多読】
  • 授業の10%未満:フランス語の文法の説明や練習を行った。【文法

 

そして、15週間の指導が終わった後に、McQuillan (1994)のアンケートと同様、多読と文法の授業、どちらが楽しく(pleasurable)、言語学習に効果的(beneficial)と感じ、どちらの授業スタイルを好むか(preference)を、理由を添えて回答してもらいました。

 

その主要な結果は、以下のようにまとめられています。

  • Students overwhelmingly found reading to be not only more pleasurable but also more beneficial for language acquisition than grammar instruction and practice.... They suggest that extensive reading of easy and interesting texts, which are then discussed in small groups, is one of the best means that teachers may have to promote a positive attitude in students and create a more enjoyable environment for language acquisition.  (pp. 290-291) 

つまり、Dupuy (1997)の研究でも、McQuillan (1994)の研究と同様に、多読の授業の方が、文法の授業よりも圧倒的に好まれ、効果的だという回答だったとのことです。

 

最後に

今回は、多読授業と文法授業、どちらがより楽しく、効果的かと感じるかを調査した、McQuillan (1994)と、Dupuy (1997)の2つの論文を紹介させていただきました。

 

英語学習者、スペイン語学習者、フランス語学習者と、異なる言語を学ぶ学習者を対象にした研究で、いずれも文法授業よりも多読授業の方が支持されたという結果は、今後の広がりの可能性を感じるものですね。また、日本でも同様の調査をすれば、似たような結果が出るようにも感じました。

 

ただ一方で、個人的には、

  • 多読も文法もどちらも重要であることが研究で多く主張されている中で、多読 vs. 文法の2項対立的なアンケートになっていること
  • 多読の授業は、読むことに加え、ディスカッションも含まれているため、結果にはディスカッションに対する評価も含まれている可能性があること
  • 多読と文法の指導時間が違うことが、効果的だと感じることに影響を与えている可能性があること

などが気になってしまいました。

 

言語習得のためには、「多読か文法か」ではなくて、「多読も文法も」必要というのは、他の論文でも主張されていますので、学生さんの気持ちを汲んだ上で、多読と文法を効果的に組み合わせた指導がこれから求められるように思いました

 

今回は、Applied Language Learningという学術雑誌に発表された2つの論文のご紹介でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬

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