こんにちは!
お立ち寄りいただき、ありがとうございます。
今回は、東西冷戦時代を象徴する「鉄のカーテン」の内側から描いた自伝的絵本をご紹介させていただきます。
2008年のコールデコットオナー賞を受賞した名作です。
本について
今回ご紹介する絵本は、Peter Sisさんが文とイラストを手掛けた絵本、『The Wall: Growing Up Behind the Iron Curtain』です。
2008年のコールデコットオナー賞を受賞した名作で、表紙に銀メダルが輝いています。
YL 3.5~4.5程度 語数は4,206語 Lexile: AD760Lの本です。
本の内容のご紹介
著者は、20世紀半ばにチェコスロバキアで生まれ、1997年には『Starry Messenger』でコールデコットオナー賞を受賞し、この作品で2回目の受賞となった著名な絵本作家である。
2007年に発表した本書は、著者の絵本作家としての原点を知ることができる自伝の絵本である。
物心ついたころから絵を描くことが好きだった著者であったが、米ソ間の冷戦の激しさが増す中で幼少期、青年期を過ごすことになる。
共産圏であるチェコスロバキアでは、子どもであっても自由を奪われ、国の方針は全てモスクワからの指示で決まっていた。
共産圏の象徴である赤い旗や星は町の至る所に設置され、社会主義活動への参加も、ロシア語の学習も強制。
電話は盗聴され、手紙は検閲され、西側諸国のラジオは禁止される。
西側諸国の考えに同調することは許されず、反社会主義的な行動をとれば密告される…。
押しつぶされそうな生活を送る中で、隙間を縫うように入ってくる西側諸国のロックンロールやコカ・コーラや長髪スタイルなどは、まさに著者にとっては輝かしい羨望の的であった。
この抑圧された気分や生活に沿うように、本書のイラストは基本的に白黒で描かれ、唯一、共産圏の省庁の赤色だけがカラーで描かれることで強いインパクトを出している。
また、アレクサンデル・ドゥプチェクが国のリーダーとなり、いわゆる「プラハの春」を謳歌できた期間のみがカラーで描かれている。
鉄のカーテンの内側を自伝的に描いた本書は、大人でも読み応え十分である。
世界平和が脅かされている今日、じっくりと味わって読みたいし、教材としても活用できる絵本である。
気になれば、是非、チェックしてみてくださいね!
最後に
この本には、『かべ―鉄のカーテンのむこうに育って』の邦題で和訳版も刊行されています。合わせてご紹介させていただきます。
この絵本は、コールデコット賞を受賞した絵本ですが、その他にも、コールデコット賞作品の紹介をしたまとめ記事が以下ですので、よろしければ合わせて覗いていただけると嬉しいです。
他にも、この作品とほぼ同時期に受賞を受けたコールデコットオナー賞作品について紹介した、以下の記事があります。
erelc.hatenablog.comerelc.hatenablog.com
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、Happy Reading♬