こんにちは。
お立ち寄りいただき、ありがとうございます。
今回は、信州大学で今から15年ほど前に行われた多読指導を報告した論文、Brierley & Ruzicka (2006)をご紹介したいと思います。
論文のデータ
今回ご紹介するのは、以下の論文です。
Brierley, M., & Ruzicka, D. (2006). Extensive reading in Shunshu University: Rationale, management and motivation. 『信州大学高等教育システムセンター紀要』2, 3-26.
論文の内容のご紹介
この論文は、今から15年ほど前に信州大学で2人の英語教員によって始められた多読指導の内容と成果を報告したものです。
この研究の参加者は、2005年度に、信州大学に在学していた、合計で13の「総合英語」のクラスを履修していた学生さん(前期450人、後期770人)です。
この13クラスに対して、2人の教員が多読の授業を採り入れることにしました。
ただ、2人の教員間で、指導内容は以下のように異なります。
- In Teacher A's classes, students were given a comprehensive introduction to the theory behind extensive reading during the first few classes. Around thirty minutes at the beginning of each lesson was devoted to extensive reading. When students had finished reading a book, they were asked to fill in a report form (see Appendix 1) which was designed to keep a record of the students' reading, data from which can be seen below, and give students the opportunity to write some response to the books. At the end of the course, approximately twenty percent of students' grades was based on the number of books they had read. (p. 8)
つまり、A先生の授業では、多読の理論的な意義などを説明し、授業内で30分ほど多読の時間をとり、読むごとにレポートを書くように言われ、成績の約20%が読んだ本の数によって評定される指導を行いました。
一方のB先生については、以下のように説明されています。
- In Teacher B's classes, students were given very little guidance beyond encouragement to read and discouragement to use dictionaries or write in the books. Around fifteen or twenty minutes of each lesson, usually at the beginning, but sometimes during other activities, was devoted to reading and choosing new books. When students had finished a book, they did not have to fill in a report form. The amount read was not taken into account in calculating the students' grades. (p. 9)
つまり、多読に関する説明や、多読の仕方について指導はほとんど行われず、授業の15~20分が多読に当てられ、読んだ後にレポートを提出する必要もなく、多読状況は成績にも入れられなかった、ということです。
この指導の影響をアンケートを使って計測し、その結果が示されていますが、その中で重要だと思ったものは、
- The evidence suggests that the more students read, the more positive their attitude towards reading English became. (p. 12)
つまり、どちらの担当教員であっても、多くの本を読むほど、英語読書に対して好意的な姿勢を示した、ということです。
こちらは、言われてみれば当たり前のようにも思いますが。
また、以下の結果も報告されています。
- Teacher A's students appear to have been more successful at avoiding boring books than Teacher B's stuclents. There is stronger correlatlon with the teacher than the number of books read, so presuinably students chose better when they had more time to choose. (pp. 13-14)
つまり、A先生の学生さんの方が、B先生の学生さんよりも、ツマラナイ本を選ぶのを避けることができた、ということです。やはり、丁寧な指導の差が出たのでしょうか。
このことから、最後の以下のように書いています。
- The results suggest that the attitude of the teacher and time devoted to choosing and reading books in class are crucially important. (p. 18)
つまり、先生の姿勢や、授業で多読に割く時間が極めて重要である、と述べています。
教育「プログラム」などとよく言いますが、やはり最終的には先生の力量で結果に大きな差が生じることを示唆した論文と言えます。
最後に
信州大学の多読の取り組みが、その後に、どのように変遷しているのか興味深いですね!
なお、このブログでは、多読に関連する研究論文の内容をご紹介したまとめ記事がありますので、よろしければ、参照用としてどうぞ。
ちなみに、京都産業大学での取り組みや、京都産業大学の先生方の論文は、以下の記事で紹介したことがあります。よろしければ、合わせてチェックしてみてくださいね!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、Happy Reading♬