タドキストによる英語多読ブログ

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「多読指導がTOEICに与える影響は?」に迫った事例的研究 Storey, Gibson, & Williamson (2006)のご紹介♪

こんにちは♪

 

以前、以下の記事で、東京の学習塾SEGにおける多読指導の効果について紹介させていただきました。

erelc.hatenablog.com

 

今回は、今から15年ほども前になる少し古い研究ですが、日本人の大学生を対象にした多読実践がTOEICのスコアに与える影響について調査したStorey, Gibson, & Williamson (2006)をご紹介させていただきます。

 

 

 

 

 

論文のデータ

今回ご紹介する論文データは以下になります。

Storey, C., Gibson, K., & Williamson, R. (2006). Can extensive reading boost TOEIC scores? In K. Bradford-Watts, C. Ikeguchi, & M. Swanson (Eds.) JALT2005 Conference Proceedings, pp. 1004-1018. Tokyo: JALT.  

https://jalt-publications.org/archive/proceedings/2005/E034.pdf

 

 

論文の内容のご紹介

この研究の参加者は、大学の工学部で学ぶ2,3年生の42名です。この42名を、以下のように2群に分けて異なる指導を8週間行いました

なお、この8週間の指導開始前に42名全員がTOEICテストを受けて、英語力に差がないように、以下の2群がつくられました。

  1. 統制群(21名)TOEICの問題演習とコミュニケーション活動を行う。宿題として、復習やTOEICの問題演習が与えられる。
  2. 実験群(21名)TOEICの問題演習と読んだ本の意見交換とコミュニケーション活動を行う。宿題として、筆者たちが用意した本の中から自分の関心やレベルに合う本を1冊読む課題が与えられる。

この8週間の指導の後、指導前に実施した同じTOEICテストを使って、効果の差を測定しました。

 

その主要な結果としては、以下のように書かれています。

This study sought to investigate the relationship between extensive reading (ER) and TOEIC scores. However, the null hypothesis, that adding ER to a TOEIC practice course will not improve students’ scores, could not be rejected (t(40) =0.41).  (p. 1014)

つまり、両群間にTOEICのスコアの有意差はなかったとのことです。

 

ただし、実験群における課題としての多読の取り組み状況には、学習者間でかなり差がありました。そこで、多読を週に30分以上行ったサブグループ(11名、平均52分の取り組み)と、30分未満だったサブグループ(10名、平均12分の取り組み)に分けて、TOEICのスコアの伸びの差を検証すると、多読を積極的に行ったサブグループの方が伸びが30%分大きかったことを、以下のように報告しています。

つまり、多読の取り組み次第ではTOEICスコアの伸びにもっと大きな効果を与えた可能性を示唆しています

Further analysis found that test group subjects could be divided into those who did the requested reading (average 52 minutes per week) and those that did very little (average 12 minutes per week). The 11 participants who read more achieved an average gain 30% greater (43 points) than the 10 who did much less reading (34 point gain). The average control group increase was 33 points suggesting that ER had some effect.  (p. 1014)

 

このことから、以下のようにまとめています。

the study concludes that positive effects of ER on TOEIC scores would require more reading over a longer period than the 10 weeks of the investigation.  (p. 1014)

つまり、この研究期間(8週間+前後のTOEIC試験2週間)以上に長い期間をとって、もっと多くの英語を読ませれば、多読の効果はTOEICにより顕著に出る可能性があるとまとめています。

 

最後に

この論文を読んでいて、

  • 実験群の参加者が読んだ本と分量が書かれていないこと(実験群の参加者を読んだ分量や難易度の観点から分析できないこと)
  • TOEICのスコアがリーディングとリスニングの合計値しか示されていなく、より詳細な分析ができないこと

などが気になりましたが、このように「成果が出なかった」という報告が論文として出版されることは意味のあることだな~と感じました

成果が出たものだけが出版されることになってしまうと、全体としての実態を反映したものとはいえないかもしれないし、成果が出なかったものから学ぶ機会が奪われてしまいますよね。

 

今回は、Storey, Gibson, & Williamson (2006)の論文のご紹介でした。ここに書いている以上の詳細が気になれば、ぜひ、論文を読んでみてくださいね♪

 

ちなみに、多読とTOEICの関係についての研究として、O'Neill (2012)と、Rutson-Griffiths & Rutson-Griffiths (2018)の論文も紹介した記事があります。

erelc.hatenablog.com

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最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬

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