こんにちは♪
今回ご紹介させていただくのは、多読研究初期の重要な論文の一つで、これまで600編ほどの論文などに引用されているHafiz & Tudor (1989)です。
論文のデータ
Hafiz & Tudor (1989)の論文のデータは以下のものになります。
Hafiz, F. M., & Tudor, I. (1989). Extensive reading and the development of language skills. ELT Journal, 43(1), 4-13.
https://academic.oup.com/eltj/article-abstract/43/1/4/376273?redirectedFrom=PDF
論文の内容のご紹介
この論文の背景として、著者たちは、Krashen博士が提唱するインプット仮説(Input Hypothesis)に影響を受けたことが、Krashen博士の文献の引用とともに書かれています。
このインプット仮説をとても簡単に言うならば、言語習得には理解可能な言語インプット(comprehensible input)がとても重要な役割を果たすというものです。
この研究の参加者は、イギリスのリーズでESL環境で英語を学ぶパキスタン出身の10~11歳の16名です。イギリスやアメリカのように、教室の外でも普段の生活で英語にふれる環境のことを、ESL(English as a Second Language)環境といいます。日本のように普段の生活で英語に接する機会が少ないEFL(English as a Foreign Language)環境と区別して使われます。
この研究では、以下のように実験群と統制群を作りました。
- 実験群:10~11歳のパキスタン出身のESL環境で学ぶ学習者16名。週に5日、各1時間、放課後の時間を利用して、Graded Readersを読む多読の特別レッスンを3カ月間(12週間)受ける。
- 統制群1:実験群と同じ学校に通うESLの学習者15名。多読の特別レッスンは受けけない。
- 統制群2:実験群とは異なる学校に通うESLの学習者15名。多読の特別レッスンは受けていない。
この多読の特別レッスンの効果を、NFER(National Foundation for Educational Research)という試験のリーディング、ライティングパートを、研究期間の最初と最後に受験してもらい、両群間で差を検証しました。
その主要な結果については、以下のように書かれています。
it emerges clearly that the scores of the experimental group have increased substantially between pre- and post-testing in comparison with those of the two control groups. (p. 7)
One of the most interesting aspects of the results is the very marked improvement of the experimental group on the writing tests where, overall, a more pronounced enhancement of subjects' test performance was observed than on the reading tests. (p. 8)
つまり、実験群の方がリーディング、ライティングともに伸びが顕著で、特にライティングで高い伸びを示したということです。
この研究では、
- 実験群にのみ、かなりの時間を割いて多読の特別レッスンが行われたこと(統制群に精読など、多読に代わる指導が行われたわけでない)
- 実験群の子どもたちが読んだ本の冊数や語数、読み方などについての記述がないこと
などが気になるところで、いわば特別レッスンを追加で受けた子どもたちがテストでも高い伸びを示したというのは、自然な結果のようにも感じます。
でも、リーディングよりもライティングへの伸びが顕著に出たというところが興味深いですね。これも、この研究の参加者たちは、普段の学校生活の中で英語を使う機会が多いことと関係しているような気がしますが、いかがお感じですか?
日本のような環境で行ったらどうだったのか、気になるところです♪
今回は、多読初期の重要な研究の一つ、Hafiz & Tudor (1989)の論文をご紹介しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、Happy Reading♬