タドキストによる英語多読ブログ

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多読を中心とした授業とリーディングスキルを中心とした授業、どちらが効果的? Robb & Susser (1989)の論文から

こんにちは♪

 

以前、多読研究の草創期の記念碑的な論文として、Susser & Robb(1990)をご紹介させていただきました。今回は、同じ著者によってに1989年に発表された論文についてご紹介させていただきます。

erelc.hatenablog.com

 

 

 

 

論文のデータ

今回ご紹介させていただくのは、初期の多読研究論文として非常に多く引用されている(400編ほどの論文に引用されている)以下の論文です。

 

Robb, T. N., & Susser, B. (1989). Extensive reading vs skills building in an EFL context. Reading in a Foreign Language, 5(2), 239-251.

http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~trobb/robbsuss.html

 

 

論文の内容のご紹介

まず、この論文が発表された1989年は、多読教材の整備も進んでおらず、多読の効果についても科学的に調査した研究は非常に限られていました。このことについて、論文内でも、以下のように書かれています。

Unfortunately, little data-based research has been done on extensive reading as an L2 pedagogic procedure. (p. 240)

 

その中で、実験デザインをとって多読の効果を探究したこの論文の価値が、高く評価されて、多く引用されているのだと思います。

 

この研究の参加者は、京都産業大学で英語を専攻する1年生125名(4クラス)です。この125名(4クラス)を、2クラスずつ分けて、以下のような指導を1年間行いました

  1. EXTENSIVE:授業ではSRA Reading Laboratory Kits 2c, 3aという本の中から、学生は好きな英文を読み、その内容把握問題やエクササイズなどに取り組んだ。宿題として、アメリカの10代向けに書かれた本を年間500ページ以上読むように課した。
  2. SKILLS:授業ではリーディングスキルを教えることを主たる目的としたInteractions II, A Reading Skills Bookという本を使用し、学生は1~2セクションの英文を個々で読み、リーディングスキルを学べるエクササイズなどに取り組んだ。宿題では、そのテキストの中からいくつか英文を読ませ、エクササイズを行わせた。

 

この指導の差を、Multiple Series Midway Placement TestForm Yというテストを使って検証しました。

 

その結果は、以下のようになりました。EはExtensive、SはSkillsの略です。

  • Getting the main idea  E = S 
  • Understanding the important facts  E > S 
  • Guessing vocabulary from context  E >= S 
  • Making inferences  E = S 
  • Reading speed  E > S 

このように、全体的にはExtensiveのグループの方が、Skillsのグループよりも、リーディングスキルも身についたという結論になりました。

 

しかし、この結果を直ちに、「リーディングスキルを教えるよりも多読をさせた方が伸びるんだ」と解釈はできないことが、論文の中で書かれています。以下のような問題点も含んでいるからです。

  1. Not An Optimal Skills Procedure:The skills textbook and the teaching procedure merely led the students through the exercises, assuming the prior existence of the skills/strategies rather than teaching them and developing a metacognitive awareness of their use.
  2. Contamination:The students were taking a total of 6 English courses concurrently.
  3. Student Readiness:The students came into the course having had practice with passages of only a few hundred words of length, because this is what is taught in the high schools and what they had been taught to decode for the entrance examinations. It could be that an extensive approach is more beneficial at this stage in their L2 development because it forces them to adopt new strategies to cope with the volume of material that they are forced to read.
  4. Differences In Study Time:As revealed in the following questionnaire, the EXTENSIVE group spent twice as much time studying at home. (p. 245)

つまり、SKILLSグループであっても学生さんたちは、スキルを先生から教わったわけではなく、単に教科書を使った演習をしただけだったことや、他にも英語の授業がたくさんあったことや、学生さんの英語学習状況に多読の方が合っていた可能性や、授業外での学習時間が2グループ間で大きく違ったことが限界点としてあげられています。

 

それと、個人的には年間500ページ以上を読ませるという分量も英語専攻の学生さんだからついてこれたのかなとも感じますし、500ページといっても、何を読んだのかで分量はかなり違う可能性があることも気になりました。

 

しかし、繰り返しになりますが、多読教材も今ほど揃っていない中で、当時の貴重な実証的な多読研究として、Robb & Susser (1989)は一読の価値があると思います!

もし気になれば、リンクから読んでみてくださいね♪

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬

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