こんにちは♪
今回ご紹介させていただくのは、Susser & Robb (1990)の論文です。発表されてから30年以上経った現在、250編以上の論文などで引用されている有名な論文です。
論文のデータ
Susser, B., & Robb, T. N. (1990). EFL extensive reading instruction: Research and procedure. JALT Journal, 12(2), 161-185.
https://jalt-publications.org/sites/default/files/pdf-article/jj-12.2-art1.pdf
論文の内容のご紹介
この論文の要諦を簡潔にまとめさせていただくならば、多くの先行研究をベースにして、外国語学習および外国語教育としての多読の形作りをしたものです。当時は多読の研究がまだ少なく、その中で、多読がどのようなものかをまとめ上げた、多読研究の記念碑的な論文といえるものです。
具体的には、先行研究を概観することにより、多読の定義として、以下の5点を導き出しています。
- it is reading of large quantities of material or long texts.
- it is reading for global or general understanding.
- it is reading with the intention of obtaining pleasure from the text.
- because reading is individualized, it is reading with students choosing the books they want.
- the books are not discussed in class. (p. 165)
つまり、多読とは、多くの分量を読み、大まかな意味を把握し、楽しみのための読書であり、選書は学習者に任せられ、読んだ本について議論はしない、という特徴が挙げられています。
現在の多読の基盤となる特徴を、早くもこの時期には導き出していたことがわかりますね。
また、印象に残ることとして、以下のような主張もされています。
・when reading, we engage in activities such as recalling word meanings, inferring, drawing conclusions, and so on, but these are all aspects of the act of comprehending (i.e., reading). They cannot be separated into discrete skills, either statistically or by task-specific testing. (p. 163)
・Because of the varying quality of graded (not to mention ungraded) books, and
the elusive nature of authenticity, teachers are advised to build varied collections that include graded materials, children's literature, high interest-low vocabulary books, literature for young readers, and popular writing. (p. 174)
1つ目は、「読む」とはつまり、読みに付随する様々な個々のスキル(語の意味を思い出したり、推測したり、結論を導き出したりといったスキル)に分解することができないという主張です。
学習者の立場から解釈すれば、様々なリーディングスキルを一つずつ覚えたとしても、結局のところ、読む力は、読むことによってしか身につかないということですね。
2つ目は、Graded Readers(英語学習者用の読み物)は、その質に差があるため、ネイティブの子ども用の読み物などを組み合わせて多読図書を揃えるといいという助言です。この論文の後、日本の多読の導入期で、ネイティブ用の読本シリーズOxford Reading Tree(ORT)が広く使われるようになりますが、そのやり方の多読をすでに1990年の時点で支持していたということになりますね。
最後に
ちなみに、同じ著者による別の研究論文Robb & Susser (1989)を紹介させていただいた記事もあります。
また、Graded ReadersやLeveled Readersについては、このブログでご紹介させていただいた記事もありますので、もしご関心があれば、合わせてチェックしてみてくださいね♪
今回は、多読研究の草創期を形作った有名な論文をご紹介させていただきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、Happy Reading♬