タドキストによる英語多読ブログ

1000万語以上の多読経験をもとに、多読の魅力を発信するブログです!本には魅力がいっぱい。英語の本を通して、人生を深く、豊かなものに。

多読に加え、コーパスデータを使った指導効果は? Hadley & Charles (2017)の論文から

こんにちは♪

 

以前、多読に加えてエクササイズを組み込んだ指導の効果を研究した論文についてご紹介させていただきました。

erelc.hatenablog.com

 

 

論文のデータ

今回、多読の効果に関連した論文でご紹介させていただくのは、Hadley & Charles (2017)"Enahanceing extensive reading with data-driven learning"です。

 

Hadley, G., & Charles, M. (2017). Enhancing extensive reading with data-driven learning. Language Learning & Technology, 21(3). 131-152.

https://scholarspace.manoa.hawaii.edu/bitstream/10125/44624/1/21_03_hadleycharles.pdf

 

言語のデータベースであるコーパスのデータを使って、文法や語彙などを学習する方法を、"data-driven learning" (DDL)と呼びます。

この論文では、多読に加えてDDLを使った指導をして、語彙文法の知識や、読解速度にどのような効果があるかを調査しています

 

論文の内容のご紹介

この研究の研究期間は、16週間(週90分の授業)で、研究参加者は日本の大学に通う22名の英語学習者です。この学習者が以下の2グループに分けられました。

  1. 統制群10名(中国人5名、日本人4名、フランス人1名)
  2. 実験群12名(中国人5名、日本人4名、フランス人2名、韓国人1名)

どちらのグループにも、Oxford Bookworms Library(OBW)シリーズを与え、期間内に200,000語以上を読むように指導しました。授業では毎週30-45分程度が多読に当てられました(ただし、OBWのどのレベルをどの程度読んだのかの詳細な記述はありません)。

両グループの違いとしては、多読後の活動として、実験群にはOBWコーパスを使ったDDL活動を採り入れ、統制群には多読と相性のよいと提案されている会話活動を採り入れました

この指導の違いの差を、読解速度や語彙サイズといった量的な分析だけでなく、質的にも分析を行いました。

 

この研究の重要な結果としては、以下に示されています。

Quantitative data from the Vocabulary Levels Test by Nation and Beglar (2007) and a C-test (Klein-Braley & Raatz, 1984) constructed from an upper-level Bookworms readaer found statistically significant lexicogrammatical improvements for both groups, but greater improvement took place within the control group.  (p. 131)

 

つまり、語彙レベルテストや、C-Test(文法や読解力と相関のあるテスト)では、両グループとも効果が上がったのですが、DDLを行ったグループよりも、他の会話活動を行ったグループの方が効果が高かったということです。

 

そして、大学教員は研究者でありますが、学生さんにとっては大切な教育者でもあります。その観点からは見逃せないのが次の一節です。

The affective response of the experimental group to the semi-hard DDL experience was disappointing.  With the portofolio material, the performance of the experimental class was observed as less enthusiastic than the control class from the outset.  (p. 139)

 

つまり、実験群の学生さんたちは、DDL指導に対して最初から関心を寄せず、授業への熱意も統制群より低かったという観察です。これは筆者による観察ですが、このことは、この研究の質的データからも示されたと書かれています

The qualitative data clearly indicates resistance on the part of the experimental group to even a semi-hard approach to DDL.  (p. 144)

 

確かに、学生さんの目線に立てば、コーパスを使って語彙や文法を調べると言われても、「言語調査をしているわけではないのになぁ…」と素朴に感じてしまいそうです。特に、目の前には筆者(ネイティブスピーカー)がいるのですから、「英語で話そうよ...」という気持ちになってしまいそうです。

 

最後に

筆者たちは実験群への指導の仕方を少し修正したと書かれていますが、結果として学生さんたちが授業に対して不満を少なからず感じたことを読むと、何だか可哀そうな感じがしてしまいました。学生さんたちにとっては貴重な大学での授業なのですから。

きっと、DDLはいい学習方法なのだと思います。ただ、目の前の学生さんをよく理解して、適切に導入したり、足場架けしたり、DDLの意義を伝えたりする必要があるのかもしれませんね。そういった丁寧な指導の必要性は筆者ご自身も最後に書かれていますので、このご経験を今後の学生さんのためのよりよい教育につなげていってほしいな~と、イチ国民&納税者として感じました。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬

ロシアのクリスマス絵本のコールデコット賞授賞作品 『Baboushka and the Three Kings』のご紹介

こんにちは♪

 

今回ご紹介させていただく絵本は、Ruth Robbinsさんが文を書き、Nicolas Sidjakovさんがイラストを描いた『Baboushka and the Three Kings』という絵本です。

 

 

 

本について

Baboushka and the Three Kings』は、ロシアに伝わるクリスマスシーズンによく読まれる民話で、1961年のコールデコット賞に輝いた名作です。

 

 YL 3.0~4.0程度 語数 631語   Lexile: 580Lの絵本です。

Baboushka and the Three Kings

Baboushka and the Three Kings

 

 

本の内容のご紹介

昔々、寒風が吹く寒い冬の日のこと。貧しいけれど、小さな小屋に暮らすBaboushkaは、毎日綺麗に家の中を掃除し、暖炉の薪も忘れずにくべ、Baboushkaの家はとても温かく心地よいものでした。

 

ある雪の降る夜、華やかな隊列がBaboushkaの小屋にやってきました。そして、隊列の中でも特段威厳のある3名の王様が、Baboushkaに、誕生したばかりの赤ちゃんに贈り物を届けに行こうと誘い出します

 

Baboushkaは、家事がまだ終わっていないし、こんな寒い夜に旅を続けるよりも、今晩はこの小屋で休み、明日の朝に出かけるように言います。3名の王様が率いる隊列は、休む時間はないと伝え、そのまま歩みを続けましたが…。

そしてBaboushkaは、翌朝の早朝、赤ちゃんを探しに出かけますが…

 

この続きが気になれば、是非ご自身で確かめてみてくださいね♪  日本ではあまりお目にかかれないロシアのお話にふれられるのも貴重ですね。

 

木版画のような深みと温かみのあるイラストが素敵です。

また、最後には、Baboushkaの歌詞と譜面がついています。

  

最後に

ちなみに、このブログでは、他にも英語の本を紹介した記事があります。それと、コールデコット賞とは何かを説明した記事もあります。もしご関心がありましたら、合わせてチェックしてみてくださいね♪

erelc.hatenablog.com

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今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬

既存の知識を英語で学べるのにぴったりのLet's Read and Find Out Scienceシリーズ 『The Sun and the Moon』のご紹介♪

こんにちは♪

 

今日から大型連休が始まった方も多いのではないでしょうか。全国的にぐずついた天気になるところが多いようですが、お休みの方は、リフレッシュできるといいですね♪

 

以前、以下の記事でLeveled Readersとは、英語のネイティブの子どもたちが読書を自分でできるように、レベル別にわけられた読本だとご説明しました。

erelc.hatenablog.com

 

 

Let's Read and Find Out Scienceシリーズについて

今回は、Leveled Readersのシリーズの一つ、Let’s Read and Find Out Science(通例、LRFOと省略されます)シリーズをご紹介します♪ 

 

こちらのシリーズは、楽しく読んでおしまいというよりは、読んで何かを発見したり、学んだりできる、教育的効果の高いシリーズになっています。扱われているトピックや内容は、人体や植物や動物や宇宙や天候や地球など、身近な科学分野が広く扱われています。詳細については、以下の出版社のHarperCollins社のHPから参照できます。

Books in series Let's-Read-and-Find-Out Science 1www.harpercollins.com

 

このシリーズは、Level 1とLevel 2があり、Level 1であればYL 1.4~2.0で平均的には700語程度の分量、Level 2であればYL 1.6~2.0で平均的には1,000語程度の分量です。Level 1とLevel 2ではあまり差はない印象ですね。

 

The Sun and the Moonについて

一冊、LRFOシリーズのLevel 1の『The Sun and the Moon』をご紹介させていただきます。

 

YL 1.4~2.0 語数は1,132語の本です。

The Sun and the Moon (Let's-Read-and-Find-Out Science 1)

The Sun and the Moon (Let's-Read-and-Find-Out Science 1)

 

 

 空に浮かぶ太陽と月女の子がロケットに乗って宇宙に出て月に行くというお話に沿って、まずは月の説明が始まります

 

具体的には、月の表面はゴツゴツした山や斑点のあるクレーターにおおわれていること、隕石が月に衝突してクレーターができたこと、月には空気も風もないため、昔のままの地形を保っていること等が書かれています。

 

その後、説明は太陽に移り、月よりも遠く離れたところに位置していること、月の表面には黒点があること、太陽紅炎があること、地球の火山よりも数百万度も高い温度におおわれていること等が説明されています。

 

最後に

このように、書かれている内容自体は日本の小学生でも知っている内容ですが、その知っている内容のものを英語で読むというのは、多読の仕方として無理がなくてとてもいいことですね♪

 

ノンフィクションが好きな方にもおすすめのシリーズです。それに、元々はネイティブの子ども向けに書かれた本なので、飽きないように、内容に関連した知識を添えていてくれたり、比喩をつかって説明したりしてくれているのも嬉しいシリーズです。

 

もしご関心を持たれたら、一冊いかがですか??

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬

語彙習得により有効なのは?「多読オンリー」または「多読+エクササイズ」? Teng (2015)の論文から

こんにちは♪

 

以前、多読を通して繰り返し英語に触れることによって、語彙を身につけることができるかに関して、Uchihara, Webb, & Yanagisawa (2019)の論文を紹介させていただいたことがありました。

erelc.hatenablog.com

 

 

はじめに

今回は「多読と語彙習得」のテーマに関連して、中国のNanning UniversityFeng Tengさんによる以下の論文をまとめたいと思います。

Teng, F. (2015). Extensive reading plus explicit vocabulary exercises: Is it better than extensive reading-only? Malaysian Journal of ELT Research, 11(2), 82-101.

https://journals.melta.org.my/MAJER/downloads/majer11_02_06.pdf

 

論文の内容のご紹介 

多読で語彙の習得が進むと言われていますが、多読による語彙習得の効果はどの程度かを探究した論文です。この論文では、18歳~20歳の中国人大学生52名を研究参加者にして、

  1. 多読のみ行った26名のグループ
  2. 多読に加えて、毎週20分程度の語彙のエクササイズを行った26名のグループ

に分けて、語彙習得の差などを検証しています。

 

研究期間は7週間で、最初の5週間における5回のセッション(1セッション4時間)で、1回1冊(15,000語程度のGraded Readers)を読むという多読を行いました。

合計で5冊、78,819語を読んだことになります。

そして、各本の中から6語(5冊合計で30語)の簡単な単語を選び、それらを学生さんが知らない高難度の語に変えました(例えば、weakvulnerableに、quicklyexpeditiouslyに変更しました)。

そして、これら5冊を読んで、高難度の30語がどの程度身につくかを検証するという方法を採りました。

 

結論として重要なものは以下になります。

As previous studies have suggested, adding explicit vocabulary learning could make the words more salient, and form a deeper level of semantic processing. (p. 96)

 

つまり、多読に加えて語彙の明示的な指導(エクササイズ)を行った方が、多読だけをさせるよりも、語彙習得に効果的だったことを報告しています。

 

ただ、この論文では、

  1. 語彙の明示的指導は、どのように、どの程度実施したのか
  2. 試験で使った30語は、それぞれテキストの中で何度出てきたのか
  3. 30語の語を高難易度の語彙に変えたということは、15,000語程度のGraded Readersを紙で打ち出して読ませたのか

といったことが書かれていませんし、そもそも、1つのグループは多読のみで、もう1つのグループは多読に加えて語彙のエクササイズをしたのであれば、当然の結果と感じなくもないですね。

 

最後に

いずれにしても、多読だけでなく、語彙をきちんと指導することが語彙力向上につながることを示した研究だと思います。

私たちの立場からすれば、「多読で辞書を使ってはダメ」というよりは、「多読で気になる語があれば、適切に(あまり頻繁では読む量が落ちてしまいますが(;^ω^))辞書を使うことが語彙力向上の有効な方法と置き換えられる研究結果といえますね♪

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、Happy Reading♬

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